書籍(短)
□今、貴方を想って
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「アイシテルヨ」
「・・・」
「ナニカイッテ?」
「・・・」
こんな会話は、もうできなくて・・・。
「――――・・楸瑛っ・・・!」
どうして消えた。
何故藍州などと・・・
「・・・っ・・」
絳攸は自分の左頬に触れる。
そこは愛する彼の好む場所。
自分で彼の元へと行けないことが悔しくて仕方がない。
彼の温もりはもうそこにはなく、ただ外の風の音が聞こえるだけ。
ふと顔を上げるとそこには紫の花菖蒲がなんとなく飾られている。
王から賜ってからは、毎日飾られるようになっていた。
『花菖蒲の意味は《あなたを信頼します》その異名は
《剣士の花》 そして剣のように長く鋭い葉に囲まれた花は
王家を表す紫・・・』
(お前は、何を思って花を捨てたのか・・・)
いつまで俺に独りの夜を過ごせというのか、
お前は今何を考えている・・・?
同じ事を考えているか・・・?
お前は今何を想っている・・・?
同じ事を想っているか・・・?
不安でたまらない。
誰かを感じていないと、壊れてしまいそうになる。
今日も彼は楸瑛の温もりを必死に探しながら夜を明かす・・・
窓の空に満点の星と月が浮かぶある日のことだった。