企画文章

□初夢
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せっかく外へ出たのに、オレは数分と経たないウチに後悔するハメになった。





まず寒い。


そして極めつけは


正月で大セール(?)している地元商店街だった。


(うぅわぁ〜嫌だなぁ)

誰が何を買い漁っているのか分からないぐらいの混み様だった。





そんなに欲しい物があるのかと神経を疑いたくなる。


(オレは欲しい物なんか無いもんね〜)




珍しく冷静な自分がオトナに見えた。


調子に乗ってワザと店からの呼び掛けに返事しちゃったりする。



「ぼうや!この蟹どぉっ!!?」

「う〜ん、でも脚ばっかじゃ……ん!?」






ちょっと待て。



ぼうや?



ぼうやって、ぼうや??






ぼうやって…まさかオレの事…??







商店街がグニャリと歪む。

クラクラしながらもオレは『オトナ』な反撃をなんとか開始した。




「異議あり!!!」

「おっ威勢のいいぼうやだねぇっ!」

「オジサン!!『ぼうや』とは未成年者ですよね!?」

「良くわかんねぇケドそう見えるんじゃないかい?」




(くぅっ…負けてたまるか!!)




「未成年者へ商品の勧誘ならびに販売は法律で禁じられております!!!」

「へぇえ〜やけに賢いぼうやだなぁ…で??」




「……………。」


(『で?』ってなんだよ!?)



「だ…だから未成年者への販売は…禁じられて」

「そんな事より、ぼうやこっちのヒラマサはどうだい?脂がのってて美味しいよ?」

「オレは、ぼうやじゃない!!!!」







その時、頭上からイキナリ声がした。


「おじいさん、ぼくはそっちの蟹ミソたっぷりのズワイガニが良いなぁ」

「おじいさんじゃねえ!ロマンスグレイのオジサンだ!!
で?そっちのカッコいいお兄ちゃんはズワイガニね?何杯??」

「5杯」






(え?そっちのカッコいいお兄ちゃん?)





誰?

いや、見なくてもわかる。
この存在感というか芸能人オーラに物腰柔らかな受け答え。


(イヤだ。凄ぉくイヤな予感がする…)




「ウホッ太っ腹〜モテるだろっえぇ?」

「まさかぼくなんて全然ですよ」



恐る恐る上を見る。



ニッコリときらびやかな笑顔を振りまく牙琉検事と目が合った。






(やっぱりこの人だったぁああ〜!!!)
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