ナル×オド
□Parfume's Love
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「成歩堂さん」
「ん〜?」
「な、成歩堂さんの好きな人って…あの、誰ですか?」
『Parfeum's Love』
成歩堂さんは普段全く動かないクセに、その質問と同時にピクッと身体が揺れた。
なんの気ナシに聞いたつもりだった。
でも、なぜか質問のした時のオレはシドロモドロになってた…と思う。
(女の子同志の会話じゃあるまいし何聞いてんだオレ…)
しかし
いくら時間が経っても成歩堂さんは答えてくれなかった。
(アレ??寝てるのかな?)
声が聞こえていなかっただけなのかもしれない。
でも
なぜだかオレはホッとした。
もしかしたら聞いてはイケない話題だったのかもしれない。
(…まぁ、いっか)
オレは事務所の掃除を再開した。
仕事が無くて仕方なく掃除ばかりしていた為、事務所は常に片付いていた。
(それでもやる事ないからなぁ…)
掃除中、成歩堂さんは大っ嫌いなハズの掃除機にも全く反応しなかった。
いつもは『うるさい〜』って言いながら室内犬みたいに逃げ回ってるのに。
(ひょっとして…聞こえてた??)
一瞬背中がヒヤリとした。
成歩堂さんの方をチラッと盗み見たが、相変わらず寝てるんだか寝てないんだか、ソファに身を沈めたままだった。
(怒ってるのかな…?)
「あの、成歩堂さん」
なんとか声を振り絞って呼び掛けたが返事は無かった。
「……っ」
胸がズキッと痛むのを抑えて言葉を続けた。
「その…ちょっと買い物に行って来ます!!」
オレは、顔が見えない成歩堂さんに向かって吐き捨てるように言い残し、そのまま振り返らずに事務所のドアを閉めた。