ナル×オド

□停電
1ページ/7ページ


「あ〜あ、こりゃしばらく止まないな」

「困りましたね…うわっ雷!!」

「怖いの?」

「怖くないです。」














『停電』














ぼく達は、今日もヒマだった事務所を閉めて帰ろうとしていた。

しかし

その矢先にやって来た夕立に足止めをくう事になってしまった。


雨がバラバラとアスファルトをさらに黒く塗りつぶしてゆく。


稲妻が暗い空を気持ち悪いぐらい眩しく占拠しては往復し始めていた。







「急に…雨降ってきましたね」

「うん、今から外に出るのはちょっとヤバイかもね。」



彼は、顔に不安そうな影を落として所在なさげにウロウロしている。



「成歩堂さん…」

「ん?」

「ひえっ!また雷だ!」


空を横なぐりに広がって網目みたいになった稲妻を見てオドロキくんはペチョンと尻モチをついた。





「大丈夫?」

とすぐに抱き起こしたけれども


「は?…はいダイジョブです」






と窓から目を離さずに 引きつった笑いを浮かべていた。











(う〜ん、こんな状態じゃ雨が止んでも一人で家に帰せないなぁ)





ぼくは、だんだん心配になってきた。




ゆっくりソファに座らせて肩を抱いた。

すると、ちょっとだけホッとしたのか
少〜〜しずつ身体をすり寄せて安堵のため息をついた。




(何を話したらいいんだ…)




今度はぼくの方が焦ってしまった。


だってこんなに素直なオドロキくんを今まで見た事がないから。






考えあぐねた結果、いつも通りからかってみる事にした。



「へぇオドロキくんて雷怖いんだ〜子供みたい」

「…怖くありません。ただ、あの光とか音に少ぉしだけ驚いているだけです」


(…それを『怖い』って言うんじゃないのか)








「それに」



「それに?」






「オレはそんな弱虫じゃありません!!」





ぼくの肩に身を寄せながら必死で強がろうとしているのを見て
思わず笑みがこぼれた。








「わっ笑わないで下さい!!」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ