ナル×ミツ

□正夢
1ページ/9ページ


私は今、留置所にいる。

(しかし…これは何かの間違いなのだ!)




先程から警備員が身ひとつ動かさず冷たい視線だけで私の様子を伺っている。




(違う!やめろ!そんな目で私を見るな!!)












『正夢』














私は、恐怖した。


暗くてせまい部屋…

壁と天井は、通気性ゼロと言わんばかりの湿っぽいコンクリートに塞がれ 入口側の壁には、頑固な老人のような雰囲気をした太い鉄柵が何本も打ち込んであった。

唯一の灯りである切れそうな蛍光灯は、しょぼしょぼと自分だけを照らしている。


その中に私は簡素な鉄パイプで出来たイスに座らされ、
マネキンみたいな表情の全くない警備員にずっと見張られていた。


なぜここに座っているかも分からずに。











最初は しばらくは我慢した。
だけど、薄暗い部屋と警備員の視線に だんだん胸が痛みだす。

彼の目は『お前がやったんだ。』…間違いなく私の真後ろで、そう言い続けていた。










そして、ついに耐え切れなくなり

私は、罪もない警備員に飛びかかった。


「やめろぉおっ!!」














だが
そこに警備員はいなかった。







「あ…うぅ?」


あまりの眩しさに目が痛い。


しかし
目が少し慣れてきて良く見ると

いつもの壁に、いつものベッド…そこは、まぎれもなく自分の部屋だった。



(うぅ…凄く、イヤな夢だった。)







目をごしごしこすり、呼吸を整えてゆっくり起き上がる。

「あっ?」




パジャマが嫌な汗でビッショリ濡れていた。






「フッ……私も弱くなったものだな。」

自虐的だが、なぜだか笑ってしまう。






しかし、ずっとこのままというワケにもいかないので
なんとかベッドから降りて浴室へ向かった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ