穴眠村の子守歌

□5.子守歌
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 それからも懲りることなく男達は襲撃してきた。次第に桃花も山の神の力を借りられるようになり戦いは一気に楽になった。だが、実果はどうしても山の神の力を借りることはできなかった。
「もう、お姉ちゃんもちょっとは戦ってよね」
 不満そうに桃花が言うができないものはできない。だが、一度できたのにできないというのが実果自身不思議でしかたなかった。
「あ、お猿さん」
 桃花の声ではっと我に返る。山歩きの間は危険だから考え込むなと櫂に注意されていたにも関わらず忘れていた。
「お姉ちゃん、見て見て。このお猿さん人懐っこいよ」
 桃花がすぐ近くまでいって猿を撫でている。実果もつられて近寄ると猿が急に飛び跳ねた。そして桃花と実果に体当たりしてそれから木の上へと逃げる。
「あーっ!」
 と同時に桃花が叫んだ。
「捕られた! お姉ちゃん、かぎが捕られちゃった!!」
 慌てて実果も荷物を確認する。桃花動揺かぎだけきれいに捕られている。
「何っ、この猿奴らの手先かっ」
 焦った様子で櫂と登が駆け寄ってくるが後の祭りだ。飛鳥だけは木の上を飛んで猿の近くまで言っているがとても猿の動きにはかなわない。
「お、追いかけなきゃ」
 言って桃花が走り出す。
「桃花っ」
 明るい時間とはいえ一人で勝手な行動はまずい。慌てて追うものの以外にも桃花の足が早く追いつかない。と、その時。
「わぁーっ」
 桃花の叫び声が聞こえた。と同時に実果の足元が沈んだ。罠が張ってあったのだ。もともと猿にかぎを取らせ、追いかける実果たちを捕える作戦だったのだ。飛鳥は猿に反撃をされ、櫂と登もばらけた瞬間に男たちに囲まれ捕まってしまった。こんな時に山の神の力が使えればと実果は思ってはっとする。
「桃花、力はどうしたのよ」
 小声で尋ねるが、桃花は焦った様子で首を振る。
「か、かぎがなくなったら使えなくなっちゃったみたい」
 かぎがなくても使える、実果はそう言いたかったが無駄話をしている時間はなかった。男達が手足を縛られ身動きの取れない実果たちの前で上機嫌に見下ろしている。
「桃花さん、適当な話でやつらの気をそらしていて」
 飛鳥に無茶なことを言われた桃花だが、何を察したのがやる気をだし、いつもの強気な桃花に戻る。
「今までよくも手こずらせてくれたな」
「手こずったのはあんたたちが未熟だからでしょ。こっちは大したことしてないもんね」
 挑発しているとしか取れない言い方だが、子供相手だ。向こうも加減はしてくれるだろうと予想して桃花に任せる。
「実果さん、まだ使えない? あなたならかぎなんてなくても力を使えるはずよ」
「私ならって、でも」
「長女だけなの。かぎがなくても力が使えるのは。だから、お願い」
 実果は困惑する。捕まってすぐに試した。だが、やはり山の神は答えてくれないのだ。
 そんな実果をじっと見ていた櫂がおもむろに口を開く。
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