穴眠村の子守歌

□4.使命の重さ
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「うっそー! なんでお姉ちゃんがいるの!?」
 翌朝、実果は桃花の大声で起こされた。普段は桃花より寝起きのよい実果だが、やはり昨晩のごたごたで相当疲れていたのだろう。今の今まで深い眠りの中にいた。
「お、おはようございます」
 少しだけ緊張しながら櫂と登に挨拶をする。この際桃花はうるさいだけなので無視だ。
「あぁ」
「おはよう、よく眠れた?」
 実果は頷き、それからきょろきょろと辺りを見回す。
「飛鳥は?」
「あれは先の様子を見に行ってる」
「うそ。一人で!?」
「心配するな。あれは隠密行動を得意とする子だからな。やつらに見つかる心配はない」
 櫂がくしゃりと実果の頭をなでる。
「櫂! お姉ちゃん! ちゃんと説明してよぉ。二人でわからない話しないで!!」
 顔をぷくーっと膨らませて桃花が訴える。そんな桃花を登がなだめながら、食事を持って戻ってきた。
「じゃあ、食事をしながら話そうか」
「食事をし終わってからだ」
 櫂がそういったので桃花が急いでご飯をかき込む。実果もまた桃花にせかされて急いでご飯を食べた。そんな二人を笑ってみながらも登も早めにご飯を済ませてくれた。
「ごちそうさまでした! それで?」
 桃花がせっかちに話を促す。昨日までふてくされて元気がなかったんだよ、と登にこっそりと教えられ、もうしばらくそのままでもよかったのにと実果は思ってしまった。
「二人は穴眠り村の伝説を知っているか?」
 ようやく櫂が話を始める。桃花を笑いながらも実果だって気になっていたのだ。真剣な面持ちで頷く。
「はい。小さい頃にお母さんから聞きました」
「桃花はお姉ちゃんからきいたよ」
「なら話は早い。実は君たちにしかできない仕事っていうのは、そのことなんだ」
「そのこと?」
「眠り穴が眠りから覚めてしまったんだ。それをもう一度眠らせて欲しい」
 実果が桃花を見ると、桃花もまた実果を見ていた。
「「無理!」」
 二人の声が絶妙なタイミングで重なった。そんな重要な使命を自分たちが果たすなどとても考えられなかった。登がそんな二人に苦笑しつつ補足する。
「二人はね、山の神の力を借りられるんだよ。だからやればきっとできるよ。大丈夫」
 あれか、と思い出して実果は身を震わせる。一方の桃花は嬉々として聞き返す。
「何それ! え、え? 魔法みたいなのが使えるってこと?」
「まぁ、そんなところ」
 それから櫂が手を二人の前に出し、掌を開く。吸い込まれるように二人はその掌に注目する。
「かぎ?」
 不思議そうに桃花が口にする。ちょっと古びた雰囲気で単純なつくりのかぎがそこにあった。
「二人とも手を」
 言われるがまま、実果と桃花は櫂の掌に手を重ねる。すると不思議なことに淡い光が掌を包む。
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