NOVEL

□《闇のkyrie》〜運命の歯車〜
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献花を墓に供えアスランは黙祷をささげる

「約束、したのにな」

ふと目を開けて悲痛の面持ちで母の墓を見遣りぽつりと漏らした

「………ごめん」

母の最期を思い出しきゅっと唇と結び、今の自分の状況を心の中で母に語りかけた。

暗殺に失敗して死にかけたところをキラ・ヤマトと言う人物に助けられたところから順番に、一緒に過ごせて楽しかった日々の事やそこで出逢った人たちの事。
だが優しくしてくれたその恩人の父が殺し損ねたターゲットだったと言うことで酷い別れ方をしてしまい彼を傷つけたこと。それなのに彼は部屋を与え、まだ優しくしてくれること。
そして…。組織には戻ることが適わず組織に所属している弟のシンと再会することが不可能になった事を告げた。


「それでも俺は、諦めたくないんだ…」


心の中で語る事を止め口に出した言下、胸にある首飾りに触れようとした。
がその時、ピリピリとした空気を感じアスランは咄嗟に振り返った。殺気だ。


鋭く瞳を凝らしその方向を見る。
と其処には――










*****


ラクスから客人が訪ねて来ているという連絡を受け、会社から帰宅早々キラは客間の扉を開けた。赤い髪が真っ先に目に付く。
また。物音に反応した彼女も開いた扉の方を見遣った。二人の視線が重なると彼女の双眸が穏やかなものへと変わってゆく


「キラ…!!」


読みかけだった分厚い本をパタンと綴じ、机の上へ置くとすぐさま駆け寄ってきた

「良かった。あれから逢えなかったからずっと心配していたの」

あれからと言うのはアスランがスパイであるかも知れないと言う報告をフレイから受けた日の事だ。
アスランは暗殺に失敗した際に顔をみられたらしく、父と親しい仲だったフレイのお父さんは単独で犯人を捜索しており、その目撃証言の似顔を持っているのだと言う。それをフレイは偶然見つけてしまい、先日家に招待した際に出逢った人物と似ているということからキラに連絡を入れたのだ。
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