NOVEL

□嘘
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戦争が終焉を向かえラクスはプラント、カガリはオーブでそれぞれ違う道を歩むこととなった。皆がバラバラで暮らすようになりそれぞれの新しい人生を始めていく。

僕の知らない道を歩いていく仲間達。
そう考えると少し寂しくもあるが悲しいだとかそんな気持ちは抱かなかった。
僕がずっと隣りに置いておきたい人、それはアスランだったから。
アスランが隣りにいる限り、僕は限りなく幸せでいられる。
だから僕はアスランを必死に引きとめ、今は小さな家で二人で暮らしていた。

家事はもちろん分担。
どちらが主夫ということもなく、料理は毎日交代で作る。
朝、おはようと起こしたり夜には僕がふざけてアスランのベッドに潜り込んで悪戯したり。

そんな日々がとても楽しい。
ずっと続けばいいと思う夢のような生活。
だけど夢は夢。
いつかは醒めてしまうもの。
いや、僕たちの場合はいつかと言わずさよならの時はすでにカウントダンを始めていた。
それぞれ別々に成す事があって、僕たちは責任を取らなくちゃいけない。
いつまでも幸せに浸っていることは出来ないんだ。











「ねぇ、アスラン。お花見しに行かない?」

アスランが作った夕食を食べながら何気なく問いかけてみた。
今日は野菜が沢山入ったポトフがメインの夕食だった。栄養のバランスも考えて作ってくれるところはさすがアスランだと思う。作るのが簡単だからと言う理由が頭をかすったけれど、そこはそれ。良い方向に思っていたい。
そして僕の問い掛けにウインナーを囓ろうとしていたアスランの手が止まった。

器にウインナーをゆっくり戻すこと数秒の沈黙。


「いいけど、誰が弁当を作るんだ?」
「え…?そりゃあ」


「アスランでしょ」
「キラだよな?」


見事声が重なった。
だけど見事に意志は重ならなかった。
アスランが眉を思いっきり顰めたけど僕も同じ顔をしていると思う。


「当然、言い出したのはキラだからキラが作るべきだろ」
「いやだよ。僕はアスランの手作り弁当が食べたい」
「…作るのが面倒なだけじゃないのか?」


当たってるけど当たってない。
声に出して言いたかったけど本当の事を告げるわけにもいかず、これ以上の言葉は不毛なような気がして早々に断ち切ると黙って食事を進めた。
…沈黙が痛い。アスランからパリッとウインナーを囓った時の音が大きく響いた気がして、それが酷くいたたまれなかった。
想い人の手作り弁当を持ってデートがしたい、だなんて言えるはずがないのに。
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