NOVEL

□ベニバナ
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「ではまたお昼に落ち合いましょう。行くわよ、メイリン」
「うん。アスランさん、シン。また後でねっ」

「何やってんですか。俺たちも行きますよ」
立ち去って行く二人を微笑まし気に見つめているアスランに、ぶっきらぼうにそう言ったシンはさっさと屋敷の中へと入っていく
アスランもそれを追いかけるように慌てて後へと続いた




ベニバナ
  〜特別な人〜



「へぇ、何処もかしこも鏡なんですね」

当たり前な感想を述べるシンが今いる場所は今月オープンしたばかりという遊園地でのミラーハウス
アスランは気分が乗らないと断ったのだけれども、女性二人の熱心な願いに骨を折るしかなかったのだ。
二組に別れ、先に出口にたどり着いた方にお昼を奢るという賭けを持ち出したルナマリアに二組に分かれることになったが、グーとパーで決めたそれは見事同姓同士の組み合わせになってしまった





「っッッ――…」
「何やってんですか、アンタは」
途中入れ替わり先頭を歩いていたアスランは見事お約束なオチをかましたようだ。
まぁ、それも無理の無い話。このミラーハウスは、鏡とガラスで作られていてガラスの方は透明なのでまだ先があると勘違いしがちになるのだ
「やっぱり俺が先行きますからアンタは後からついてきて下さい」
そう言って先に出たシンは左手を壁について歩いていたが、暫く曲がったのち後ろを振り返るとあの人の姿が無いことに気付いた
「はぁぁぁ──」
深い溜息をつくしか出来ない
「アスランさーん?」
来た道を戻ってみたもののアスランの姿は其処には無く、代わりにいたのは見知らぬ子供だった。
恐らく枝道で別れてしまったのだろう
「仕方ないな…。…ま、そのうち会えるだろ」







「…やっと出られた」
結局途中で出会うことはままならず出口で貰った紙を確認すると30分でクリアと書かれていた。
「結構掛かったな…。さてと…」
出てそうそう辺りを見回したが知人の顔は見当たらず、壁に背を預ける。この場に姿がないのはアスランはまだ中に居るのだろうと憶測するが、問題はメイリン達だ。落ち合う場所は出口ではなく観覧車の前なので先に出ているのかが不明で勝敗が分からない。
一応財布の中身を確認してみると溜め息が出た。
「てか遅…」
人が出てくる度に目を向けてはいるが毎度期待を裏切られてしまう
「ほんと…何やってんだろ。あ、そうだ。携帯…」
急いで携帯を取り出しコールを数回ならした所で電話が繋がった
『シン…っ!今何処にいるんだ?』
切羽詰まった声が聞こえ、冷静に言葉を返す
「それはこっちの台詞ですよ。俺、もう外出てるんでアンタも早く出てきてくださいよ」
『そうなのか?なら今からそっちに向かうよ』
そう言ったかと思うと出口から携帯を耳に宛てたアスランが出てきた。
「…遅いです」
携帯越しに言葉を紡ぐ。刹那視界に映るアスランは眉尻を下げ申し訳なさそうに謝った。
「どうせアンタの事だから外に出ず出口の前で俺が来るの待ってたんでしょ?」
お見通しといわんばかりの口調でそう言って携帯をきり、アスランの手を握るとニヤリと笑った
「またはぐれると嫌ですしね?まだお昼まで時間ありますし何処行きます?」
「あ、あのなっ」
揶揄を含んだ言葉と笑みにアスランは何か反論しようとするも有無いわさんとシンは違う建物に目を向け明るい声を出し手を引くようにして歩きだした
「あ、あれなんてどうです?」
「……」
「ちょっと聞いてるんですか?」
「…やっぱり恥ずかしくない、か?」
「いえ、俺は別に。ふーん。アンタは恥ずかしいんですか」
先程の笑みをより一層深め意地悪く手をぎゅっと握り締めアスランの反応をあおる
「放してなんかやりませんよ。だって俺、はぐれたらアンタを見つける自信ないですから」
「はぐれるわけないだろ」
「あれ?さっきはぐれたのは何処の誰でしたっけ?」
「〜〜っっ」
完全に言い負かされたアスランは、ぐいぐいとリードするシンに深い溜め息をついたのだった



終わり


お題・花言葉A
特別な人…ということで

いろんな意味で特別ですよね。可愛くない態度取るのはアスランさんだけですし(笑)あれ?カガリもでしたか??まぁそれよりも、素っ気ないシンは普段書くことがないので楽しかったです。男前に攻めるシンが今は好きです。

ニヤリと余裕ぶったシンにわたわたするアスランさんとか激萌え

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