小説

□桐咲様頂き物
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長屋の裏道の一角。
日も真上で照りつけている昼の暑い最中。

『お前は悪い奴だろ!』
『鬼ん子だもんなっ!』
『悪い事しないように俺らが退治すんだ!』

子供達はそこに現れた〔鬼ん子〕退治に
我先にと精を出していた……






□ンサらかいはノ僕□






──その村は何ともおかしな風習が根強く残っており、
自分達と異なった色を持つ人間を〔鬼の化身〕または〔鬼の子〕と称し
酷く非難しているような村だった。
遺伝子の関係で茶色の髪を持つ子供や浅黒い肌色の人間が産まれたりする事はよくあるが、
そういった人間を悉くぞんざいに扱っては見て見ぬ振りをし、何とも閉鎖的な守護を固めていたのだ。

そんなやっかいな村に先日、一人の若い名医が家族を連れて引っ越してきた。

そしてその名医の愛息である少年が

「俺が何したってんだよこの糞餓鬼共めッ!」

今し方子供達から暴力を受けている、
この『渦巻鳴門』少年である。

父親に混じる異国の血を濃く受け継いで、物の見事に異なる色の彼。

日の光を反射するべっこう色の柳髪
幼いながらもしっかりと一線の通る小鼻に女顔負けの白珠肌

一番はその長い睫に縁取られた、
強く輝く双蒼の眼だ。

腕も足も腰も全て折れてしまいそうなくらいに華奢で
加えて身に纏う衣類が異国の物、とくれば。

『鬼ん子のくせに生意気だぞ!』
『そうだそうだ、鬼ん子のくせにッ!』

見事に罵られまくりの身勝手な虐め受けまくり。
正に格好の餌食。
鬼の子と呼ばれぬ訳が無い。

あぁ本当に可哀想。

確かにあのでっかい目で上目遣いに睨まれたら苛めたくて仕方が無くなるのもわかるし
あの可愛い声を張り上げる姿も微笑ましいものがある。
それにあの身…

「何時までも変な語りを続けてんじゃ無ェってばよ!!」
「…っと、危ねェな。」

飛んできた蹴りを間髪避けて身だしなみを整える。
一方少年はと言えば蹴りが当たらなかった事を悔しがりながら
堂々俺を指さし悪態を付いた。

「つかテメェ毎回毎回こんな場面ばっか見に来てんじゃ無ェよ、この暇人ッ!」

だーから怒った顔も可愛いっつってんだろ馬ァ鹿、何の効果も無いっつぅの。

──その顔見たさにからかいたくて仕方が無いのだけども。

そう。
俺は暇を持て余す子供の一人。
毎度この光景を見つけては高見からの見物に洒落込んでる次第なわけで。

「どうせ俺は成金上がりな貴族の坊ちゃんですから。
だからお前と違って大層暇なワケ。」
「くあぁぁっお前何時もながら凄ェムカつくってば!」
「お褒め頂き光栄で。──お前餓鬼に囲まれてたんじゃなかった?」
「褒めて無ェッ!!───あんな奴ら三秒でノしてやったってばよ。」

中指御っ立てて優越顔。
女顔でひ弱そうな外見をまんまと裏切る腕っぷしの強さはまさに惚れ所。
そんなギャップもお気に入り。

「お前等みたいな動きづらそうな服着た奴に負ける訳無いもんね!」
「確かにお前のその短パン?な格好、生足出てるし目の保養には成るな。」
「違っ!こンの変態ッッ!!////」

………あー、耳元で騒ぐなっつってんのに。

口同様手も早いコイツの繰り出された拳を再び避けると

───ニヤリッ

その勢いを利用し引き寄せて

「ふぇ?ぁ…、うわっ!」

ようこそ俺の腕の中
お待ちしておりましたよお客様。

「狽ャゃあっ!離せってばよ!!」

顔に縦線入れて後退りしようがまだまだ甘いぜ
ナルトの背後バッチリのっぺらい壁の一枚在るのみ。
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