小説
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「‥もう終わり?」
言いながら彼が笑う理由なんて
多分 知らない方が幸せだ、と思いながら。
笑顔で悪事を働く上司に頭痛を覚え苦笑したのは 忠実なその部下だった。
黒だとか 白だとか
「お前、イカサマしただろ」
店を出てギチギチに札束の詰まったトランクを半分以上抱え歩きながら口にしたのは僅かな非難の混じった言葉。
呆れたような、その口調。
「‥やっぱバレた?」
確信をついたのだから当たり前だが 案の定 本人からはそんな答えが返ってきた。
やっぱりな。可笑しいと思ったんだ。
「いくら悪運が強いっつっても限度がある」
賭博が好きなくせに苦手な里長は論外として コイツは案外運がいい。が。それにしたって今回は勝ちすぎなのだ。
現金の入ったトランクの数約5つ、というにわかに信じられない数字。
先程の勝負に負け これらを巻き上げられた男達の哀れな顔もまだ鮮明に覚えている。
「‥なんでまたこんな事、」
「火影命令だし、仕方ないじゃん?」
「……‥」
イカサマしろとは言われてねぇだろ、と、
未だニコニコ笑っている人物の部下―シカマルは5つ中4つ持たされているトランクがずり落ちないよう体勢を整えて 盛大に溜め息を付いた。