頂き物

□未熟
1ページ/1ページ


【未熟】





「三橋、待てよ!」

「ヤ、です。」

「三橋っ…!」

「阿部君、なんて、しらない…!」


ぷいっとそっぽを向いて先に歩いて行ってしまう三橋に内心俺は焦りまくりだ。

今朝からずっと、なぜかご機嫌ナナメのようで。

俺が何を言っても、シカトはしないけど(そこがまた可愛んだけどな) そっぽを向いてしまう。

理由がわかれば解決策も考えられるけど、今回ばかりはサッパリ理由がわからない。

俺が頭をひねっている姿を見れば、三橋はしゅんっと顔を伏せる。

慌てて近寄ろうとしたら、また先を歩いていってしまった。


原因…原因…昨日までは、機嫌が良かった。

夜だって、こっちがとろけるくらいイイ声で…、いやいや、それは置いておこう。

あれか、昨日ちょこっと恥ずかしいカッコさせたのがいけなかったのか?

いや、そんなの別にいつも通りだし…。


じゃあなんだよ?


――今朝…?


「三橋!」

「――…え…?」


ぐいっと三橋の腕を引っ張って。

そっと顔を近付けちゅっ、と軽く唇を落とした。


「今日はまだ『おはようのキス』してなかったからか…?」


……これくらいしか思い浮かばなかった俺は、アホの部類に入るのか?

まぁ、三橋がこのくらいですねるなんて思って…


「…ありがと、阿部君…」


思って、いなかったのだけれど。

この時の三橋のふにゃりと柔らかな笑顔が俺の考えが正解だったことを物語っている。


そんな笑顔、反則だ。


俺もつられて、自然と笑顔になってしまった。


三橋の前でだけは、余裕のポーカーフェイスになるには、まだまだ修行が足りないのかもしれないな。







おわり

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ