焦がれるだけの強さより
□特別補習授業? 遭遇編
2ページ/9ページ
「じゃあ、とりあえず死神様に現状報告と、ついでに退学取り消しの直談判しよーよ」
フェルマータは、ティアのロングスカートから手鏡を取り出した。
この二人は日常的に仲がいいので、ちゃんとお互いの持ち物を把握しているのだ。
(僕が知ってるの、ナイフぐらいだもんな……)
武器との縁遠さを垣間見て、ロングは寂しい視線でエンディを見つめた。
顔がやっと覗ける程度の鏡に、器用に小指で『死神様んトコの鏡番号』を描く。
「42−42−564(シニシニゴロシ)……っと」
ゆらり、鏡が揺らめいて、ぼんやりとその向こう側に、
「ちぃーす、よぉーっす、こんちゃーっす!」
死神様が現れた。
「あれ〜、今は夜だったっけか?じゃあ、こんばんわぁーっす」
「こんばんは、死神様」
フェルマータは営業スマイルで会釈した。
「んん〜、その浮かない顔とか見ると、もしかして、失敗?」
生徒達は沈黙で返事を返した。
「うぅ〜ん、やっちゃったね〜。皆将来有望だからさぁ、本当は退学とかヤなんだけどさぁ〜……」
「死神様、お願いします、もう一回だけチャレンジさせて下さい!」
なむなむと手を合わせるエンディ。なまじ体格が小さいので、とても可愛く目に映る。
が、普段を見知っているロングには、(腹黒……)程度にしか映っていなかった、とか。
「うぅ〜ん……」
再び唸る死神様に、
「私からもお願いします!」
「死神様ぁ〜」
ティアとフェルマータもたたみかける。
「――?」
遠巻きに見つめていたブランクは、ふと違和感に空を見上げた。
「風……」
雲の流れが、異様に速い。
風が変わったのに気がついたのは、どうやらブランクだけのようだった。