焦がれるだけの強さより


□特別補習授業? 遭遇編
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「じゃあ、とりあえず死神様に現状報告と、ついでに退学取り消しの直談判しよーよ」


フェルマータは、ティアのロングスカートから手鏡を取り出した。


この二人は日常的に仲がいいので、ちゃんとお互いの持ち物を把握しているのだ。


(僕が知ってるの、ナイフぐらいだもんな……)


武器との縁遠さを垣間見て、ロングは寂しい視線でエンディを見つめた。


顔がやっと覗ける程度の鏡に、器用に小指で『死神様んトコの鏡番号』を描く。


「42−42−564(シニシニゴロシ)……っと」


ゆらり、鏡が揺らめいて、ぼんやりとその向こう側に、


「ちぃーす、よぉーっす、こんちゃーっす!」


死神様が現れた。


「あれ〜、今は夜だったっけか?じゃあ、こんばんわぁーっす」


「こんばんは、死神様」


フェルマータは営業スマイルで会釈した。


「んん〜、その浮かない顔とか見ると、もしかして、失敗?」


生徒達は沈黙で返事を返した。


「うぅ〜ん、やっちゃったね〜。皆将来有望だからさぁ、本当は退学とかヤなんだけどさぁ〜……」


「死神様、お願いします、もう一回だけチャレンジさせて下さい!」


なむなむと手を合わせるエンディ。なまじ体格が小さいので、とても可愛く目に映る。


が、普段を見知っているロングには、(腹黒……)程度にしか映っていなかった、とか。


「うぅ〜ん……」


再び唸る死神様に、


「私からもお願いします!」


「死神様ぁ〜」


ティアとフェルマータもたたみかける。


「――?」


遠巻きに見つめていたブランクは、ふと違和感に空を見上げた。


「風……」


雲の流れが、異様に速い。


風が変わったのに気がついたのは、どうやらブランクだけのようだった。
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