焦がれるだけの強さより


□特別補習授業? 戦闘編
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ティアに向かってきたゾンビは、腕も身体も枯れ木のように細かった。


しかし、その腕で、武器たるフェルマータを受け止め、受け流し、押し返してくる。


(フェルマータが、重たい……)


いつもよりも、残撃が遅い。


(切れ味も、落ちてるのかも……)


『エーイッ』


感情の無い掛け声と共に、ゾンビが手刀で面を打ってきた。


「きゃっ」


どうにか、フェルマータの剣身で止める。


大きく振り、ゾンビとの間合いを取るが、


『ヤァーッ』


手刀のゾンビはすぐさま突っ込んでくる。


人間と違い、怯まない。


恐怖を忘れるのは無謀だと、死武専は教える。


(その通りね、恐怖心のないやつがこんなにおっそろしくて、)


ヒトの形はしていても、それはヒトじゃない。


(――おぞましいとは、思わなかった)


今度は、腹部を狙った突きを繰り出してきた。


身体を捻って、避ける。


「まっさかぁ、手刀の相手に苦戦する日が来るとは思って無かったわ」


しかし、そういって笑ったティアの顔には、


いつもの不敵さは、無かった。


(ねえ、何で、)


フェルマータに、魂から問う。


(――何で、返事をしてくれないの?)



 
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