焦がれるだけの強さより
□黒衣の女神は蒼穹に微笑む
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彼女は目を覚ました。
しかし、それは朝であるから目を覚ましたのではない。
彼女が目を覚ました時、世界が丁度良く朝を迎えていた、ただそれだけの事。
「……朝」
彼女は暗闇の部屋で目を瞬く。
「……起きた、私」
まるでそれがひどく奇妙なことであるかのように彼女はそう呟いて、開いた両手に顔を埋めた。
「嗚呼」
彼女は言う。
「これは、今日はあれから、いったい何度目の朝かしら?」
黒く、奥行きだけで存在感の足りない部屋から、まさか返事が返ってくるはずもない。
「嗚呼」
彼女は言う。
「引っ越しを……しましょう」
やがて、世界中を朝が駆け巡る。