焦がれるだけの強さより
□買い物がてらに
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彼女はずっと、そこに居た。
そこで眠っていた。
何時からそこに居たのだろう?
何故、そこにいるのだろう?
そこは何処なのだろう?
全ては、時間と記憶の彼方。
今思い出せるのは、永い眠りから覚めた瞬間のみで。
「だからさ……」
そいつは、重たい錆色の彼女を、いとも軽々持ち上げて。
彼は、頑固な彼女に語る。
「朝が来るから起きんじゃなくって、起きたい瞬間が来るから起きんだよ」
彼女は、ふっと人の姿になった。
彼の、頼りなさげな腕の中。
「――おはよ」
彼は笑った。
まるで、偶然出会った旧友に話しかけるような、そんな軽薄な感触で。
それが、エンディ・スフォルツァンドと、ロング少年の出会いだった――。