手塚治虫「MW」所見

どこか、手塚ワールドは、万人に愛される国民的メルヘンだと思っていたので、この作品はかなり衝撃だった。
現代のように漫画上の性描写がまだ確立されていなかったであろう当時において、「問題作」「禁断」と呼ばれる作品はいくつか知っているが、その中でもこの作品は、どうにも救われない話の代表といえるだろう。
とにかく驚いた!
確かに手塚先生の漫画なのに、始終「これってありなのか?」なんて既成概念への懐疑と戦い続けながら読み進めた。
(以下素直な感想を綴ります笑)

第1章 誘拐
ん?何の話を読んでるんだっけ?そんな疑問を抱きながらの誘拐劇。
しかも犯人はどう見てもロベルト!(いや、キャプ翼の…笑)その風貌に微笑ましさを感じたのもつかの間、まだ小さな子供とその親を何のためらいもなしに惨殺。BJで痛い場面は慣れてるつもりだったけど、子供のあれは引いたな。
賀来神父も早々に登場。その前で惜し気もなく付け髭とグラサンを外したロベルトもとい結城。美貌か。確かに美貌だ。いくつもの顔を持つ美青年。ちょっともみあげをどうにかしたらいいのに…なんてことにはこの際目をつぶります(笑)
1章からさくさくと賀来と結城の絡みもあり、こりゃ濃い話だ…と感じざるをえなかったな。

第2章 悪夢
まだ物語の冒頭なのに、もう早速賀来神父の過去語りです(笑)
15年前の、結城少年との出会いと運命を変えた境遇。
ここではまだうやむやだけど、もう既にここでこの二人はできちゃったわけだ。
結城なんて小4だぜ!早い!でも確かに可愛い!!
この展開が手塚世界でありうるなら、クロオが幼少期に間久部とできていても何にも問題はないわけだ!
まるで少女のような、無邪気で愛くるしい子供かぁ…。ナイス表現!
しかしいくら年が離れているからといっても、結城少年が致死量に近い毒を身に宿してしまったというのに、MWの毒素を全く受け付けなかった賀来って、どんだけ強い体を持ってるんだー(笑)
いやしかし、MWで死んだ島民の描写は、ベルセルクに匹敵する不気味さだったなぁ。

第3章 一蓮托生
表向きはやり手のエリート銀行員である結城の計画的残忍さがいよいよ描かれはじめる回。
全くもって自己利益のために何のためらいもなく諸悪を尽くす感じ。
でも、賀来神父の前ではなんだか可愛い表情も見せたり。
だから負けちゃうんだよな、神父さんたら!(笑)

第4章 トライアングル
賀来神父も、何だか普通に犯罪の片棒を担いでるし、なんだかよくわからないことに(笑)何だかんだいっても、賀来も普通に犯罪者じゃん!(笑)
しかも結城の魅力に惑わされっぱなしになっとるし!
でも「愛してる」って賀来との情事のあとに呟く結城の台詞は、たぶん本心なんだろうなぁ、なんて。
主導権は結城っぽいし完全に誘い受けなわけだけど…描写が男性漫画家ぽくなくて驚かされる。
萩尾望都作品や、竹宮恵子作品を読んでるような、不思議な気持ちになってしまうな。

第5章 報復
賀来に言い寄る娘に手を出し、平然を装う結城。同性愛的女性漫画ではありがちな展開です(笑)
でも、それがばれたかも?って思った瞬間の結城の慌てる様子は、ちょっとみものだったかな。
怒りのあまり結城を殺す(未遂だけど)賀来神父なぁ。なんかなぁ。ヘタレだよなぁ。

第6章 悪魔の化身
殺したと思っていた結城が生きていたばかりか、巧みな言い訳に完全に負けてしまう賀来。
賀来の前では茶目っ気たっぷり色気たっぷりな結城も凄い。脚線とか、男のものじゃないよなぁ。手塚先生たらもー(笑)
ぶっちゃけると、ちょっとなよっちくパンツ一枚で男に迫る結城より、スーツに眼鏡な堅物結城を犯してもらいたいなぁ〜♪
つか、愛犬に何をさせてるんだって話だ!あの犬が雄だったらと思うとちょっとあわあわしちゃうけど、舐めっこなら…ギリOKか?

第7章 虎口に入る
始終結城の計画的犯行過程話。よくやるよ…(笑)

第8章 栄光の夜
このタイトルにはいろんな栄光が含まれてるんだろうな。
つか栄光をつかんだ側と、地獄に突き落とされた側のギャップがすごい。
栄光の裏で死んでゆく命というか。
殊更、牧野さんちの一家心中は痛い話だった。子供たちのあどけなさに、全作品中唯一泣けた!わかっていて毒を飲む兄妹が…(泣)
支店長へのカミングアウトと虐殺もすごかったなぁ…。

第9章 殺しのプレリュード
久々に出たロベルトコス!(違)
今回も結城の計画的犯行がメインなんだけど、爆発に巻き込まれた学ランの兄ちゃん、可愛かったのに実に惜しい!もっと絡んでほしかったなぁ…。

第10章 疑惑の穴
ちょくちょく出てくる怪しい顔立ちの目黒検事、日本人かも怪しいのに、サッカーやっていたらしい!その顔で!(笑)
洞察力は群を抜いてるけどね。見た目はあんたが一番怪しいよ(笑)
今回急展開といえば、賀来を以前慕っていた谷口って女性を完全に手中にして、結婚なんかやるとか言いだす!当て付けかな?不可思議な男心だ(笑)
でも、MWの後遺症による発作があることを、賀来に相談しない辺りは、なんだろう、心配させたくないとかそんな気持ちがあるのかな。
死の苦しみをひとり定期的に味わってるんだもん、おかしくなっても仕方ないのかもしれないなぁ。
所詮、なんともなかった賀来にはわからない苦しみ、なのかもしれないな。

第11章 第三の証人
何だかんだ言っても肉体関係を続ける二人。
やっぱり好きなんだろな、賀来も結城のことが。
初めて会った時から虜っぽいし(笑)
で、結局は計画に乗って、犯罪の片棒を担ぐわけだ(笑)

第12章 廃墟
悪夢の思い出が詰まる島に、隠蔽に加担した男を拉致してきた結城と現地合流する賀来。
つかさあ。そのシャツの柄は何?これ、手書きだよな(笑)凄すぎる。派手なゴルゴだ!(笑)
派手なゴルゴと冬服ロベルトだ!(笑)
思い出の初夜を果たした洞窟の中で、またもいちゃいちゃする二人だけど、過去語りは可愛かったぞ!!
いいなぁ〜♪ありなんだ。そんな少年愛ありなんだ手塚ワールド!(泣)

第13章 島の果て
ここで過去語りも核心です(笑)
小4の少年を相手にペニスを出したか!
わなわなわな!(笑)
ありなんだ!!!(しつこい)
もう、体が動かない車椅子の愛くるしい某美少年がそうされた、そんな脳内転換妄想が爆発です!(笑)
いいなぁ…(涎涎!)
いよいよMWの核心に迫りつつある展開。結城の絶体絶命な状況で、自分のことは顧みずに結城救出に走る賀来は珍しくかっこよかったかも!
愛だなぁ。うん、鈍い本人は気付いてないだろうけど!(笑)

第14章 再会
島からの帰途〜現実生活へ、なんだけど、賀来神父、いきなり谷口澄子にコクります!
つかここまで入り込んでる澄子も凄い!女の執念とか、怖い部分だよなぁ、なんてちょっと思い始めた(笑)

第15章 協力者
遂に動きだす賀来神父。
思い立つのが遅すぎだ!(笑)
結城が、復讐のために動いてるんじゃなくて、本気で自己中的欲望でMWを欲しがってることを知り、やっと重い腰を、って感じかな。
青畑新聞記者、いい人だよなぁ…。
その青畑記者の調べで、15年前のMWの悪夢とその後の国家レベルの隠蔽工作が浮き彫りになってくるんだけど。
この展開はどこかで。
そか、FF7のニブルヘイム事件と似てるんだな。
何食わぬ顔で隠蔽後住み着いた住民とか…。
違うのは、ニブルヘイム事件は5年前。MWは15年も前ってことか。15年もたてば、捜査も難しいわな…。
その悪夢の事件の唯一の生き残りがMW事件では賀来と結城(結城がMW中毒)、ニブル事件ではザックスとクラウド(クラウドが魔晄中毒)ってわけだな。ふむふむ。
隠蔽のあとに現地から運びだされたMW。FF7では運びだされたのはジェノバか。
ちょっと肌に馴染んだ気がした(笑)
青畑さんとの話の最中に、結城が倒れた連絡を受け、「死ぬな!!死ぬなよ」と叫ぶ賀来。ん〜、愛なんだろうなぁ。

第16章 邂逅
なんかそそられるタイトルです(笑)
結城をめぐる女同士のトラブル…なんか的を得ないところでの争いみたいで妙な気がするな(笑)
そこには真実の通じあいがないからか。
目黒検事の推理も相変わらず冴えてるし、青畑さんも頑張ってる。願わくば健やかであれ。

第17章 標的
青畑さんが紙面で訴えた事柄が主流。やってくれたなって感じ!

第18章 封じこめ
退院してすっかり元気そうな結城。女相手、男相手とよくやるよ(笑)
賀来と結城のキスシーンをついに覗き見した澄子!「ゲーッ」と言いつつ幻滅はしない彼女は偉いなぁ(笑)
そして遂に青畑さんが標的に!彼にはもっと頑張ってほしかったー(泣)
唯一のスターシステム的伴俊作も、なかなかにおいしい役回りです。

第19章 アラベスク
結城のナルシストぶりがちょっと微笑ましい出だし(笑)
いよいよ結城の結婚の回です。
まぁ全て彼の計画のためのってやつだけど。
その華やかな表向きとは別に、裏では結城の指示の元、殺し屋達が動きます。
巻き込まれた伴俊作さん、気の毒だー。容赦ない拷問痛そうだ〜(泣)

第20章 倒錯
結城の犬にあわや噛み殺されそうなヒゲオヤジ!
寸でのところで命は助かるものの、男のイチモツを食い千切られたらしいです(泣)うわ、痛そうだ…。
犬を凄く可愛がっていたふうだった結城だけど、死んだ報告を受けても全く同じない。むしろヒゲオヤジを取り逃がしたほうに興味がいく始末。所詮そんなもんだったんだ…。
フォモの社交場に置き去りにされるアホな賀来には笑うしかないけど、その件に関しての運の良さはさすが、神掛かってるかもな!(笑)

第21章 エピソード
今回も結城の計画ストーリー。だんだんグローバルになってきた(笑)

第22章 仮面の訪問
21章の続きかな。
外人のバアサン相手もジイサン相手もやっちゃう結城って本当に凄い。夫婦まとめて手中に収めるその魅力っていったい…。
そんな中、疑いはじめた自分の奥さんを平気で惨殺。
いや、物凄いわ。色々と。

第23章 R基地に悪魔が来た
逮捕令状を持ってきた目黒検事がいうに、結城の容疑は「殺人、傷害、窃盗、詐欺、暴行、その他28件の容疑」らしいです。
うーむ、どこかの暗黒街の皇太子並みだ!(笑)
でも間久部がここまで凶悪だったのかはわからないけど…。
ミンチ中将夫婦を手玉にとり、MWが保管されているらしい米軍基地への潜入に成功する結城。別行動で基地へ潜り込み、結城を追う賀来。
ついてくる羽目になった司教様や、ミンチ中将、金庫破りのゴエモンも、何というか酷い扱い!
そしていよいよMWとのご対面!

第24章 人質
基地からの堂々とした正面突破から脱出。全てが計算された鮮やかさ。
結城はかなりひどい奴だけど、賀来と一緒にいるときのあどけなさを見ていたら、なんか憎めなくなるから不思議。無事に生き延びろよ、そんなふうに思えてしまう。

第25章 破滅への出発
残された種明かしも終わり、復讐も達成。あとは運命の決死行!のはずが、小型飛行機のなかでも結城は賀来大好きモード!
それを口では咎めながら抵抗しない賀来ってほんとにヘタレだよな…(笑)

第26章 最後の賭
歌舞伎役者の結城の実兄まで参戦しての、警察側の賭けが始まった!話にはたまに出てきても、ちゃんと登場したのはこれが初めての兄・玉之丞さん。瓜二つとはよく言ったもの。
もみあげがさっぱりな分、兄のほうが綺麗かな?(笑)
そんなどさくさに、結城からMWの袋を奪い取ることに成功した賀来。そのまま袋とともに上空から身投げ!
ここで見せた結城の初めての涙は切なかった。
同時にミンチ中将の拳銃が結城の胸に炸裂!!!
なのかな!?
なんて思わせといてやっぱりなー、な展開ではあったけど、あのあとどうせ結城は短命なんだろうし、MW計画も失敗におわり、唯一の拠り所の賀来は死んだわけだし、未来を考えるとどうなんだ?って感じなんだけど…。
タフな賀来は意外と生きてたりするのかな?
結城は、余命を賀来に甘えて過ごせたらいいのにな。
なーんて甘いハッピーエンドは望めないんだろうけどな、MWはきっと!(笑)

以上!
手塚治虫って奥が深いな…と改めて感じました(笑)

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