short story
□ミザリー
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ミザリー
彼のことを嫌いになれたらどんなに楽だろうか。
そんなことばかり考えて思考が黒く染まってゆく。
ズルい。俺の前でそんなに幸せそうな顔しないで、笑わないで
でも、泣かないで。
どんな表情でも。嫌だ、君の顔を見たくなんかない。
「水谷、ねぇ」
いつまでもこんなこと続けてたって不毛でしかないじゃないか
「好きだよ、文貴」
だから、ねぇ、いつか来る別れのために今から準備をしようよ。
「なんでさっきから黙ってんのさっ」
教科書だって巣山に借りるし、一緒に昼ご飯も食べない。
キスだってしないし、もちろんセックスもしない。
そうしたら、すぐに自然消滅。ほら、ただの野球部員同士、
普通の関係。友達。なんていい響き!
「……ねぇ?」
あぁ、栄口の声が震えてる。
視線を上げると、彼の肩はいつもより小さく見えた。
ごめん、やっぱり君のことが好きだ。
君に手を伸ばさずにいられない、俺は馬鹿だ。
END