宝物
□俺にしとけよ
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いつからだったか、気付いたら目で追うようになっていた眼鏡をかけた少年。
暫く経てば、日々頭を占める存在になって、姿を見れば胸が締め付けられるようになった。
それが“恋”なのだと自覚した時には、既に彼の隣には銀色が居て。
ああ、気付くのがもう少し早ければと後悔したと同時に、彼が幸せそうな顔をしているならそれでいいと、二人の幸先を願った。
―――――なんて、んなわきゃねーだろィ
生憎、そんなお綺麗事を言える出来た人間ではないし、欲しいモノは誰かを蹴落としてでも手に入れたい。
例え、それが人のモノだとしても。
だが決して引き裂こうとは思っていない。あの二人の絆の強さは知っているから、何か無理に行動を起こしても意味はないだろう。
だから、自分からは何もせず、機会を待つだけ。
二人の固い絆が緩んだ瞬間を、隙だらけになった獲物に飛び掛かる瞬間を舌なめずりしながら静かに待つのだ。
〜黒猫様に捧ぐ〜
[銀新←第三者]
「ちょっと銀さんっ!なんですかコレは!?」
昼下がりのダラリとした万事屋に、お馴染みとなった怒声が鳴り響く。
ソファーで微睡んでいた銀時は、顔に被せていた『ジャンプ』を取ると、眉間に皴を寄せながら起き上がった。
「新八、俺、今すげぇ眠ぃんだけど」
起こすんじゃねぇ、と遠回しに言うがそれに対する返答はなく、銀時の声が聞こえた事でより怒気を増した声が和室から発される。
「いいから銀さんっ!!こっち来て下さいっ!!!」
ここまで激昂した声色は珍しいと思いつつ、銀時は面倒臭そうに溜息を吐くと、重い腰を上げて和室に近付いた。
「ったく、んだよさっきっからギャーギャーと」
薄く開いていた襖をぶつぶつ文句言いながら全開にすれば、先程から怒り心頭の恋人、新八が和室の中央に立っている。
その手には、銀時の着流しが握られていた。
恐らく洗濯物を取り入れたばかりで畳んでいた途中だったのだろう、新八の足元にはタオルやら神楽の服やらが散漫している。
その家庭的な光景に、ふと銀時は口元を緩ませた。
が、見上げてきた新八の顔を見れば、笑みはすぐに引っ込んだ。
唇を強く噛み締め、睨みつけてくる瞳には涙をうっすらと浮かばせ、怒りで紅潮した顔に、銀時は冷や汗を流した。
これは、ただ事ではないと。
「……なんですか、これは……」
先程の荒々しい声から一転、何かを抑えるよう静かに言った声は微かに震えていた。
新八が言いながら差し出された着流しを銀時は見遣るが、全く異変は見られない。
何に対してそんなに憤慨しているのか分からず、銀時は着流しを見ながら首を傾げた。
と、新八の男にしては細くて白い指が、着流しの衿の裏側を示す。
「……!」
促されるように視線を向けた途端、銀時は目を見開いた。
そこには、覚えの無い、真っ赤な紅の痕。