Long

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昼間は海で泳いだり、読書をしたり、この夏休みの為に取り揃えておいた大量のDVDで映画鑑賞をしたり、そうそう、昨日はついにシンジ君との二重奏を実現させた。

夕方になると二人で宿題に取りかかった。毎日真面目に取り組んでいたので、7月が終わる頃にはすっかり終わってしまって、代わりにそれからは、二学期の予習をしている。

夜になればシンジ君が眠たそうになるまで話をしたり、ゲームをしたりして過ごした。




とても楽しくて充実した日々。




クラスメイトたちが夏休みを楽しみにしている理由が今年、ようやくわかった気がする。…今まで僕にとっての夏休みといえば、ただ少しの間学校に行かない代わりに家での習い事や勉強をする時間が増えるだけ、という程度の事だったから。

友人と遊ぶ、などと言う事もなかった。


誘いはあったが、いつも断っていた。…学校がない時くらいは一人の時間を大切にしたかったからだ。…心が安らぐのは誰からも干渉されず、一人で静かに過ごす時のみだった。

そう考えると、僕に『友人』などいなかったのかもしれない。




「カヲル君?」

シンジ君が僕の顔を覗き込んでくる。

現在、8月の中頃を少し過ぎたところ。もうすぐこの、夢のような日々も終わりを告げる。

「何だい?シンジ君」

その時の事をあまり考えたくない。そんな事は終わる時になって考えれば良い。それよりも今はシンジ君との1日1日を大事に過ごしたい。

「トンネル通そうよ」

僕とシンジ君はこの日、海でひと泳ぎした後、大きな砂の城を造ろうと張り切っていた。

「いいね。じゃあ、僕はこちら側から掘っていくから」
「うん」


今までシンジ君と造った中で一番大きな砂の城。その、真ん中辺りを地面に沿って堀り進めていくと、やがてあちら側から堀り進めていたシンジ君の手とぶつかった。

「貫通し…」

貫通したね、と笑いかけようとした。

しかし、その前にシンジ君がぶつかった僕の手を、

「繋がったね」

僕の手を、握って笑った。




「………っ!」




シンジ君からの思わぬスキンシップ。僕の心臓は跳ね上がった。

「あ…」

一瞬呆けて、直後、離れていかないように素早くその手を握り返す。

「うん、繋がった」

慌てていたから、もしかしたらシンジ君は少し痛かったかもしれない。

「面白いね、砂の下で手を繋ぐなんて」
「うん、面白いね」

シンジ君がせっかく話しかけてくれているのにオウム返ししかできない。

もう少し気の利いた返しができれば良かったのだけれど、今はただ、手を握られた事が嬉し過ぎて、そしてこの手を離したくないという思いばかりでいっぱいいっぱいだった。


せめてもと、僕は満面の笑みでシンジ君を見つめた。




***




日が沈みかけると空も海も砂浜も、そしてシンジ君さえも緋色に染まる。

世界が、ほんの一瞬だけ別世界になってしまったかのような錯覚。今までは何とも思わなかった紅い世界が、シンジ君が隣にいるだけで何と美しく僕の瞳に映る事か。

「綺麗だね」

シンジ君が夕日を見つめてウットリと呟く。

「帰る前に少し、歩こうか」

大きな砂の城を背後に、僕らは夕日を眺めながら砂浜を歩き出した。









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