僕、アイドルになります!
□僕、アイドルになります!
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父さんは初老の男の人と一緒に社長室に入ってきて、そして自分のデスクに着いた。
「父さんも僕にあれを着て歌って踊れって言うの…?」
「そうだ」
キッパリ言い切られた。
「な、何で僕なの?アイドルならいっぱいいるでしょ?」
「お前以外には無理だからな。」
父さんは顔の前で手を組んだ。
「会長直々のご指名なのだ。…お前は覚えてないかもしれないが、お前が一歳の時、会長はお前を高い高いしながらしきりに"YOU女装してアイドルになっちゃいなYO☆"と言っていたのだ」
「覚えてるわけないだろ一歳の時の事なんか!…っていうか何それ何そのあやし方?!赤ちゃん相手に何言っちゃってるの!?気持ち悪いよ!!鳥肌立ったよっ!!」
「まぁ昔の話だ。会長もその事は今朝まで忘れていたのだが」
「?」
「昨日の夜、家に帰った時お前の寝顔を携帯で撮って」
「いつの間に?!」
「朝方それを会社の休憩所でネコミミ付けたりして画像加工していたのだ。」
「な、何してるんだよ!!!」
「するとそこへたまたま会長が通りかかってな。ネコミミを付けたお前の寝顔を見るなり"YOU女装してアイドルになっちゃいなYO☆"と叫んだのだ。」
「息子の恥ずかしい姿、何他人に見せてるんだよ!!!!」
「とにかく会長の言う事は絶対なのだ。そこの二人に説明を受けろ」
「む…無理だよそんなの…!!できるわけないよ!!父さんは僕に死ねって言うの!?(社会的な意味で)」
「やるなら早くしろ。でなければ帰れ!」
「喜んで帰るよ!!」
「いやちょっと待て!ただ、これだけは聞け」
「?」
「お前がこれを着てアイドルにならなければ、碇家に明日はない」
「!!!」
碇家に明日はないって…それ、つまり父さんがクビになるって事?
「シンジ君、時間がないわ」
リツコさんが服を掴んで僕に突きつけた。僕は助けを求めるようにミサトさんを見てみる。
「着なさい」
ミサトさんは助けてくれなかった。
ぷいと目を逸らすとかがみ込んで無理矢理目を合わさせられた。
「だめよ、逃げちゃ。お父さんから…何よりも自分から」
「ミサトさんが何を言ってるのかわからないよ!!」
「………………」
気まずい沈黙が室内を包む。
僕は何も言えず拳を握り締めてうつむいていた。
「冬月、レイを呼べ」
するとしばらくして父さんが初老の男の人…冬月さんにそう言った。
冬月さんは携帯電話を取り出して一言二言何か喋った。…すると数分後、背後のドアがノックされた。
「失礼します」
ドアが開いて、水色の髪を長めのショートにした美少女がたたまれた服を抱えて入ってきた。
僕はその子を知っていた。今売れてきているアイドル、綾波レイだ。
「レイ。本命が使えなくなった」
「はい」
こんな父親を持っている割にめったに会えない有名人が目の前にいても、僕の気持ちは浮かなかった。ただ黙って二人のやりとりを見つめる。
「…つまり」
レイと呼ばれた少女はたたまれた服を広げて、何故か僕の方に見せた。
「つまり、私は今夜、これを着て、ヲタク共のいやらしい視線の前に晒されるという事ですね」
その服は、真っ白な水着だった。でも服としての機能を果たさないものだった。
隠さなければいけないところ…つまり胸と、下腹部の部分が切り取られているのだ。
「そうだ。シンジが駄々をこねてアイドルにならないせいでお前はヲタク共に恥ずかしい姿を晒さなければならないのだ」
ちょ…ww
何、何なのこの話の流れww
「…わかりました」
綾波が僕に穴空きの水着を見せたままジッとコッチを見つめている。物凄く意味ありげに。
「はっ!?」
…というか、気付けば全員コッチを見つめている。父さん、冬月さん、ミサトさん、リツコさん。全員が意味ありげにコッチを見つめている。
( ゜Д゜) コイツこの状況でまだ駄々こねる気かよ…
みたいな目で!!
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