僕、アイドルになります!

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※またアイドルをやらされる




「い、嫌だよっ!!一回だけって言ったじゃないか!!」
「つべこべ言わない!!男の子でしょう!!」

「男だから嫌なんだ―――ッッ!!!」




この世は病んでいる!

僕はミサトさんからお腹に一発キツいのを食らった後、薄れ行く意識の中、それだけはハッキリ思った。




***




僕はついこの間、父さんやその部下の人たちに追い込まれて追い詰められて、逃げられなくて、仕方なく女装してテレビに出た。一度だけって言う条件を付けて。

…そんな事になった理由っていうのが、父さんの会社の会長さんがたまたま僕を見かけて、その瞬間何故か僕を女装させてアイドルデビューさせる事を思いついちゃったから。いや、実を言うと僕が赤ちゃんの時も一度同じ事思いついちゃってたらしいんだけど…変態だよ、この人、絶対変態だよ。何でわざわざ男に女の子の服着せるんだよ。可愛い女の子が着た方が絶対喜ばれるのにさ。


とにかく僕は仕方なく女装して、既に用意されていた歌と踊りを覚えて歌番組に出た。…行ってみて初めて知ったけどその番組は僕が毎週見てる番組だった…。驚いたし、凄く緊張した…

僕はリハーサルもなしにいきなり番組中盤辺りで『隠しゲスト』として呼ばれた。…会長さんが裏で手を回して、無理矢理僕の枠を作ったのだと後から聞いた。

僕の芸名は『ユイ』。

ユイは母さんの名前だ。最初は実名『シンジ』でいこうとしたのを僕が全力で阻止したのだ。いくら化粧してウィッグ着けてて、ある程度化けてるからって、もしも知り合いにバレたらどうしてくれるんだ!…というわけだ。

時間がなかったので、とりあえずすぐ思いついた母さんの名前を借りた。


乙女系男子、略してオトメン設定な僕は、インタビュー中はニコニコと愛想笑いしながら作られた『ユイ』の設定通りに受け答えした。

Q:いつも女の子の格好してるの?
A:はい、体は男の子だけど心は乙女なのでv

Q:心は乙女って事は…恋愛の対象は男の子?
A:初恋がまだなのでよくわかりません(笑)

Q:アイドルになったキッカケは?
A:友だちと松代でお買い物してたらたまたまスカウトされたんです。僕もアイドルって憧れてたので、返事をするのに迷いはなかったです。むしろ即答、でした!

Q:憧れてるアイドルはいる?
A:綾波レイさん、ですね。繊細そうでとても可愛くて、大好きなんです!

Q:趣味は?
A:可愛い小物を集めたりとかぬいぐるみ作ったりとか。お菓子もよく作ります。

Q:夢はある?
A:いつかウエディングドレス、着てみたいですv





ゾゾゾゾゾ。




思い返す度に鳥肌が立つ。何がウエディングドレス着てみたい、だ。そんなわけあるか。気持ち悪い…

将来の夢なんて今まで特になかったけどおかげさまで思いついたよ。

将来、僕はアイドルとは無縁の会社に入ってそこそこ可愛い女の子と結婚して普通に穏やかに暮らしたいよ。何事もなく平和に。刺激とかいらないから。とにかく、ウエディングドレスを着なくて済む未来を望むよ。




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