僕、アイドルになります!
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※先輩から熱血指導を受ける
学校、教室、僕の席。
昨日もなんだかんだで夜までアイドルの仕事をさせられていた僕は、朝から机に突っ伏してグッタリしていた。
まだホームルームすら始まっていないのに僕のHP、残りわずか。もう、サボってしまいたい気満々だけど、そういうわけにはいかない。
すると、
「おい、何か妙に色っぽいぞ…シンジ」
と声をかけられた。
「はぁ?」
顔を上げると、僕の数少ない友人二人が妙なものでも見るような目で僕を見下ろしていた。
今僕に声をかけたのがケンスケ。そばかす顔にメガネをかけたミリタリーオタク。今は持ってないけど、片手にはだいたいビデオカメラを持っていて何かしら撮影している。
「っちゅうかお前…最近キラキラしてへんか?」
で、今喋った関西弁がトウジ。何故かいつもジャージを着ている。
「何だよキラキラって」
僕は内心ギクリとしながら、何でもない風に装う。
「何ていうのかな〜…。最近、仕草がやけに上品っていうか…」
「妙に小綺麗っちゅうか?…しかもお前、ここんとこいつもエエニオイするし」
「ニオイ?…ああ、薔薇かな。最近部屋にいっぱい飾ってあるから」
「「薔薇ぁ?!」」
「う、うん…母さんが知り合いからいっぱいもらってきちゃって…」
う…嘘吐いちゃった。二人の顔を見て喋れない…。
僕は少しだけ上げていた顔を再び突っ伏して、二人の視線から逃げた。
「なーんかあやしーんだよなぁ。ここんとこいつも疲れてるしさぁ」
「シンジィ。お前何かワシらに隠しとんとちゃうか?」
「か…隠すって何が…」
心拍数が上がる。
絶対絶対、この二人にはバレたくない。
僕が女の子の格好してアイドルやってるなんて事。
興味本位もあるんだろうけど、多分二人なりにちょっと最近変な僕を心配してくれてるんだと思う。
…でもお願い。頼むからこれ以上は追求しないで…
***
「…てな事があったんですよ」
僕が膨れっ面で運転席のミサトさんを睨むと、ミサトさんはアハハ、と軽く笑い飛ばした。
「やっぱわかる人にはわかっちゃうのねぇ」
「笑い事じゃないですよっ!!」
あんな風に友だちから疑いの目を向けられる事になったのは、ミサトさんや父さんのせいだっていうのに!
実は最近僕は、ユイの仕事が早めに終わった日とか、休みの日は(どこに隠れてても必ず引きずり出されて)エステに連れて行かれて全身ピカピカに磨かれる。あと、ほぼ毎日ボイストレーニングやダンスレッスン、それから表現力、ついでに女の子らしい仕草のレッスンまでやらされているのだ…。
これらは"ユイ"としての更なるレベルアップの為に課せられた物だが、日常にもその効果が出てしまっていたらしい…。
「別にいいじゃない、上品とか、キラキラしてる、なんて誉め言葉なんだから」
「誉め言葉だろうが何だろうが怖いんですよ…!どこから僕がこんな事してるのがバレるかわからないじゃないですか…!僕は普通で地味で目立たないって方が合ってるのに…」
「ウゥーゥ。今一番輝いてるアイドルのお言葉とは思えないわね」
ところで僕は今、大人しくミサトさんの車に乗っている。意識がちゃんとある状態で。
学校が終わってから下校途中、必死で逃げようとする最中気絶させられて、気が付いたら女装済みで楽屋で寝ていた、なんて事にいい加減ウンザリしたのもあるし、実はもう一つ…こっちの方が重要なんだけど、理由がある。
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