僕、アイドルになります!

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「要りません。」

例えそれがどんな物でも贈ってくれる気持ちが嬉しいんだ。

…なんてさっき言ってたけど激しく前言撤回。

楽屋ですっかりユイに変身し終わっていた僕は、メイクバッチリな顔を引きつらせながら、ミサトさんから渡された箱を静かに長机に置いた。

箱はさっきまで綺麗にラッピングされていて、可愛らしいリボンが付いていた。…まぁ、仕事に必要だって言ってたくらいだし中身が乙女チックなのは想像してた。

実際乙女チックだった。

そして僕には全く必要のない物だった。

むしろ持っていたくない物だった。

「ユイ。受け取りなさい」

ミサトさんが僕を睨む。

でも僕は負けじと睨み返した。

「僕は確かにキュートなシトのココロに関する仕事が終わるまではユイをやるって契約しましたよ。…けど…けど…こんなのは嫌だよ!」
「嫌でもなんでもこなすのが仕事なのよ!ユイ!!」


「絶対嫌だ!!こんな事までしなきゃならないなんて契約書には書いてなかった!!」
「書いてなくても仕事は仕事!!ええい、観念なさいっ!!」

ミサトさんが僕を捕まえようと手を突き出しながら迫ってきた。

「うわあーーー!!!」

僕はドアに向かって全力疾走した。

嫌だ嫌だ嫌だ、絶対嫌だあんなもの―――…!

ドアノブに手を伸ばして、勢い良く掴もうとしたその時。

「失礼します」

先にドアが開いて、誰かが楽屋に入ってきた。

「うわわわわ!」

僕は慌てて足を突っ張らせて、ドアを開けた人との衝突を何とか回避する。

「おはよう、ユイ」

そんな慌ただしい僕にいきなり遭遇しても、彼女はあくまでいつも通り。

水色の短い髪の毛を揺らして綾波がぼんやり挨拶してきた。




***




「…下着」

綾波は机の上に置いてある箱の中から、ピンク色で白のフリフリレースが付いた

お・ん・な・の・こ・の !!

下着を指先で摘み上げてしげしげと眺めた。


僕は長机を挟んで綾波とミサトさんと向かい合って座っている。絶対そんな物受け取らない、という表情を作って。

僕が受け取り拒否した箱の中には色とりどりの女の子物の下着。

綾波は本番までまだ時間があるから遊びに来てくれたみたいなんだけど、今は興味津々で箱の中をかき回している。

その綾波の横でミサトさんがイライラと盛大にため息を吐いた。

「まぁ、いきなり渡したのも悪かったわ。実はユイにパンティをプレゼントしたのにはワケがあんのよ」
「ワケ?」

どうやら突然僕に女の子物の下着をはかせたがったのにはきちんとワケがあったらしい。…けどとりあえず下着の事をパンティと呼ぶのはやめてほしい。何か嫌だ。

「…聞いちゃったのよ。昨日の仕事の後」
「な、何をですか」

昨日、といえば確か雑誌の撮影とインタビューがあった。

僕は何かやらかしたんだろうか。

「ユイが帰った後にね、ちょっち忘れ物を取りに現場に戻ったら、スタッフがユイのスカートの中について話してたのよ」
「え…っ?!」


「あたしもユイも気付かなかったけど、どうやらスタッフの誰かがユイのスカートの中を覗き見たみたいでね。」
「えぇえええ?!」

ぼ、僕のスカートの中なんか見て何が楽しいんだろう!?男だよ?僕、男だよッ?!

「んで、男物でガッカリしたって言ってたのよ」

ああ、良かった。

「そうなんですか。」

男がはくスカートの中なんか覗き見るようなスタッフさんたちだけど結構マトモな人たちだったようだ。

「それにね、何でかはわかんないけどそこに惣流・アスカ・ラングレーちゃんがいたのよ」
「え」

惣流が…?何でそんなところにいたんだろう。

「んで彼女、そこで何て言ったと思う?…所詮は男なんだからしょうがないじゃないですかぁ、だってよ!」
「ふーん」

惣流やスタッフさんたちのリアクションにホッとする僕を見て、逆にミサトさんは両手でバーンと机を叩いた。

「ふーんじゃないッッ!!あんたガッカリなんて言われて悔しくないの!?」
「…全然」

何故か熱くなるミサトさんに僕は即答した。

当たり前だ。ムラムラなんてされた方が困る。




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