僕、アイドルになります!

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「まさかとは思うけど…ケンスケ…僕の写真、もう売ってた…?」

静かに問えばケンスケは引きつった笑みを浮かべた。

「はは、は、いやあの、ちょっとした実験だったんだよ。最近シンジ、やたら可愛いっていうか色っぽいっていうか」
「可愛い?色っぽい?」

「あああ〜、いやいや輝いてる?っていうの?とにかくまぁ、ほら、何だ、キラキラしてるからさぁ。もしかしたらシンジの事好きになった奴いるかなって思って試しに一枚だけ出してみたんだよ。」

………やっぱり…売ったのか…。

「いつ…撮ったの」

僕は声を低くして、ケンスケを睨み付けた。

「ね…寝てる時に…。わ、悪かったよ!でもそしたら、即日完売して…」

ケンスケは珍しく怒っている僕にたじろいだ。

「…誰が買ったの…」
「…あ〜…うん、まことに言いにくいんだが…全員男だったかな…。ああ、でも俺から写真買うなんて女子はそうそういないし、だから実際は女子からも人気あるかもだし…ええと」

「………………。」

………いるんだ…この学校にも男に興味を持つ類の人が………。


暗い気持ちになって沈んでいると、更にトウジが追い討ちをかけた。

「自分、どこぞの野郎におかずにされてんで」

僕は机に突っ伏した。

異性に好かれるならともかく…同性からそういう対象に見られるなんて…

しかも女の子に扮したユイになってる時ならともかく、ノーメイクで男子の制服を着ている、どこからどう見ても男にしか見えないシンジの時の僕を、だ。

どこかの誰かが僕の写真を使って夜な夜なナニかしてると思うと鳥肌が立った。

「しかも一度買った奴が次の日もう一度シンジの写真売ってくれって来たんだ。こんなの初めてだよ」
「アカン、完璧使われとるな。バリバリになってもーたんやろ、はは!」

「う………っ。」

トウジの言葉に悪寒が走り、僕は自分の体を抱きしめた。

そして、もう一度ケンスケを睨む。

「………ネガ」
「え?」

「ネガ、出しなよ」
「そ、そんな、シンジィ。まだこれ一回しか売ってな…」

「はやくッッ!!!」

甘えたような声を出すケンスケに僕はビシッと言い放った。





***




お昼の時間。

「ひでぇよシンジ…」

屋上で僕はお弁当を広げる前に、ケンスケの目の前でネガを切り刻んだ。それはもう、細かく細かく細かく。そして、それを大空へ向かって思い切り放り投げる。

トウジは購買で買った焼きそばパンを頬張りながら風に乗るネガを眺めていた。

「ひどいのはどっちだよ!男相手に自分の友だちの写真を売るなんてっ!」
「金が要るんだよぉ〜!!」

弱々しく叫ぶケンスケを無視して僕はお弁当を広げた。

「金、金て…今度は何が欲しいん」

わざとらしく僕の前でうなだれているケンスケを見かねたのか、トウジが呆れたように聞いた。

「よくぞ聞いてくれましたっ!」

するとケンスケはメガネをキラリと光らせて一気にシャッキリする。

「実は俺惣流のファンクラブに入ってるんだけどさぁ」

惣流?

あんまり良い記憶の無い名前だ…。

「惣流って…アイドルの惣流・アスカ・ラングレー?」
「そうそう」

どうやら思い違いではなかったらしい。…ケンスケってアイドルにも興味あったのか。


「それでさ、今まではアスカ様命!だったんだけどさぁ、こないだ歌番組の生放送でユイがパンツ出したじゃん?」
「ブッッ!!!!!」

良いペースで食べていたのりたまご飯を思わず吹き出してしまった。

ケンスケの顔に大半が命中。

「うわっ、何すんだよシンジ…」
「ご…ごめん」

僕は指先が冷たくなっていくのを感じながらティッシュでケンスケの顔を拭いてやった。

「そ、それでユイがどうかしたの?」
「ユイさぁ、その後超テンパってただろ?顔真っ赤にしちゃって、もう俺、ズキューンときちゃってさぁ!!」

「おお、見た見た、綾波と惣流のも同じシマシマでなぁ!生放送やのにどえらいサービスやったわぁ」

嫌な汗が背中を伝った。

「もう、ユイたん最高だぜ!綾波もすげぇ男らしいっつぅか、友だち思いなあの行動!惚れた!!」
「えぇええっ!?」

鼻息も荒く、顔を輝かせてケンスケは拳を握りしめた。

「だからさぁ、ユイたんと綾波のファンクラブにも入っちゃったわけよ。会費要るんだよ、会費。」




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