Short
□ 2*
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※強姦
僕は部屋に漂う良いニオイと包丁が何かを刻む音で目を覚ます。
ベッドから起き上がって台所の方へ行くと、シンジ君が朝ご飯を作っていた。
気付かれないようにソロリと近付いて、愛しい背中に思い切り抱きついた。
「わぁっ!ビックリした!…危ないよカヲル君…」
シンジ君はもぉ、と言って少し怒ったような素振りで振り返り僕を睨む。けど、その睨みに迫力はない。本気で怒ってるわけじゃないからだ。
「おはよー、シンジ君。朝ご飯何?」
シンジ君のそういう顔も可愛くて、僕はたまらずその頬に唇を押し当てた。
「目玉焼きとシャケと…今お味噌汁作ってる」
こういうスキンシップはもう日常的だから、特に驚いた様子もなくシンジ君は笑った。
程なくして僕らは朝食を乗せたテーブルを挟んで向かい合った。そして同時に二人で手を合わせる。
「「いただきます。」」
シンジ君が作るご飯は何でもとてもおいしい。
普通、一般的にリリンというのは女の人が家事とかやって男はやらないらしいんだけど、シンジ君が以前同居してた女の人たちは全く家事をやらなくて、シンジ君ばっかりがやらされていたからだろう。
ありがたい事に、ちゃんとシンジ君の手は覚えていてくれた。
ご飯を食べ終わったら、僕は食器を洗うシンジ君の横で濡れた食器を拭いて棚に戻す作業を担当する。これはあらかじめ決めたわけじゃなくて自然とできた役割分担。
最初はシンジ君が全部やってたんだけど、気まぐれに手伝ったら凄く嬉しそうにありがとうと言われて、僕も嬉しくて、それから僕は自分の中でこの作業を義務付けている。
それにシンジ君と並んで作業するこの時間は結構好きだ。目が合うとシンジ君は凄く可愛く笑う。至近距離でそういう顔をされるから、僕はご飯の後食器を片付けながら何回もキスをしてしまう。
朝ご飯が終わったら僕らは外へ出る。
僕ら以外誰もいない無音の世界を、ひたすら手を繋いで歩く。自転車に二人乗りする時もある。それで何をするかというと、特に決まってはいない。
誰かいないかと人やその他の生き物を探してみたり、景色に何か変化がないか探してみたり、流れる雲を眺めたり、追いかけっこをしてみたり。時々暇すぎて勉強なんかもする。…でもかくれんぼだけはシンジ君が泣いてしまうのでやらない。
僕の姿が見えないとシンジ君は不安で泣いてしまうのだ。ついに一人きりになってしまったのでは、と思うらしい。
ゾクゾクした。シンジ君が僕を求めてる。必要としてくれている。…そう思うと嬉しくて体が震えた。時々わざとトイレに長く入ってシンジ君が来るのを待ってしまう時がある。…決して意地悪してるわけじゃない。不安気に僕の名前を呼ぶシンジ君の声を聞きたいだけだ。悪気はない。
あの頃のシンジ君からは考えられない事だった。僕をひたすらに拒絶していた、あの頃からは。
シンジ君がまだ僕を拒絶していた頃、シンジ君をここへ閉じ込めてまだ間もない頃。
無駄なのに、シンジ君は毎日毎日飽きもせず僕以外の誰かを探し回っていた。
僕は常にシンジ君の数歩後ろを歩いて行動を観察していた。
話しかけてもほとんど無視されたし、シンジ君から僕に話しかける事もなかった。数ヶ月間はひたすらこんな感じだった。僕は焦れた。どうしてシンジ君はわからないのだろう、シンジ君にはもう僕しかいないって事。今のこの状況では本当に、僕ただ一人しか頼れる存在はないって事に。認めたくないのか。
僕は焦れた。
シンジ君はこんな事になってもまだファーストやセカンドや葛城三佐の事を想っているのだ。側にいるのは僕なのに。
僕は焦れた。
この関係の平行線を何とか崩せないものかと考えた。
いつまで経っても冷めた目しか向けてくれないシンジ君に、僕の焦れは日に日に酷くなっていった。
どうして僕を見ない?どうしたら僕を見てくれる?
シンジ君を挑発しても、怒ってもくれない。
体の不具合を訴える作戦も、最初はほんの少し心配してくれたけど何度もやる内に嘘だとバレてしまった。
僕がどんなに喚いてみても無視された。
どうしたらいいかわからなかった。
いっそ酷い事をしてみようか。
それで憎まれたら、シンジ君の心が、僕が原因で黒く染まるだろうか。
あやふやで宙ぶらりんな感情でもっていられるよりは、どんな感情であれ強く確かな感情を抱かせてみたい。
本当は、シンジ君に好かれたい。
けど、シンジ君は頑なに僕を拒絶していて受け入れてくれない。いろいろ嫌な事があって、もう誰かを好きにならないようにしてるみたいだけど、何も僕が現れた時からそうする事ないのに。それに、そんな事する必要は、もうないのに。
僕はシンジ君が欲しかった。
むしろシンジ君から向けられるものなら何でも欲しかった。無視は嫌だった。無表情も嫌だった。何でも良い、何でも良いからシンジ君から強い感情を向けられたかった。
ある日いつものようにシンジ君の後を歩きながら僕は考えた。シンジ君が僕を好きになったら、キスとか、抱き合ったりとか、セックスとかできるのだろうかと。
この頃になると僕のシンジ君への気持ちは純粋なものとは言い難い物になってきていた。いつまで経っても振り向かないシンジ君に対しての苛立ちがどんどん気持ちを歪でねじ曲がったものにさせていた。
知識でだけ知っていた、リリンの生殖行為。それはとても気持ちが良いものらしい。…正直、初めて知った時は気持ち悪い行為だと思ったけれど。
それをシンジ君と僕がする。どんな気持ちになるんだろうと興味がわいた。
そこで僕は唐突に思いついた。
シンジ君をレイプしてみようと。
レイプというのは、受けたリリンにとても大きなショックを与えるらしいから。
勿論酷い行為、最低な行為だという事も知っていた。
けれど、だからこそ僕はレイプする事にした。無理矢理体を開かせて受け入れさせる事にした。
僕には生殖行為事態不必要だったし性に関して興味もなかったから、無理矢理そんな事をしたがるリリンの思考が理解できなかった。
けれどどうだろう、いざシンジ君を組み伏せると、罪悪感を上回るほの暗い快感が僕の中で目覚めた。
性器は上向き、膨れ上がった。
目の前の獲物を侵略するべく、形を変えた。
その気になるとここはこんな風になるものなのかと、僕は自分自身驚いた。
はやく入ってしまいたいと痛みを訴えるそこに、嫌がる相手に無理矢理生殖行為を強いるリリンの気持ちを少しだけ理解した。確かにこれは辛い。
「渚…!?」
何をするわけでもなくただ毎日フラフラと後ろを着けてくるだけだった僕が、何の前触れもなく突然自分を押し倒して服を破り始めたのには流石のシンジ君も驚かずにはいられなかったようだ。
そして僕の期待通り、シンジ君は激しい抵抗を見せて、強い嫌悪の視線を僕に向けてきた。久しぶりの、感情のこもった視線、僕がずっと欲しかったもの。嗚呼、シンジ君の声を聞くのも久しぶりだ。胸が熱くなった。
「…っお前、なんか…っ、」
僕がシンジ君の一番奥まで到達した時だった。
「ころ、し、殺してやる…許さな、…殺してやる…っ絶対、殺す…!!」
苦しそうなシンジ君が呻くように言った。甘い痺れが走った。
「本当に?!」
自分の手を汚すのが嫌いなシンジ君が、あの、猫ですら殺せなかったシンジ君が。哀れなこの僕をその手で殺してくれるらしい。
嬉しさに思わず笑顔になる。
「シンジ君、僕を殺してくれるの?じゃあ、あの時の猫みたいに殺してよ」
押さえつけていたシンジ君の両手を僕の首に導くと、シンジ君の目が嫌悪から、恐怖に変わるのを見た。
どうしたんだろう、僕なんかずっと口元が緩みっぱなしだというのに。
「その手に僕を絞め殺した感触を残して。このままゆっくり、締めて…。ゆっくりだよ。僕が死ぬとこ、ちゃんと目でも見ててね」
首に触れる手からシンジ君の震えが伝わってくる。何で震えてるんだろう。
「ずっと忘れないでね。僕を殺した事」
それに、いつまで待ってもシンジ君は手に力を入れてはくれなかった。
「や…や…やだ…やだお前怖いやだ…やだ…!!」
それどころかシンジ君は僕の手を振り払ってジタバタと暴れ出した。まだ僕に対する憎しみが足りないみたいだ。
「助けて!誰か助けて!助けて!あああっ!!」
"誰か"を求めるシンジ君に苛ついて僕は何度も腰を打ちつけた。
まだ僕を見ない気?
シンジ君が抵抗を止めてただ泣きじゃくるだけになっても、止めなかった。こうして僕が腰を打ちつける度にシンジ君の中で憎い憎い僕の存在は大きくなるはずだから。
けれど、シンジ君をレイプした後、思わぬ事態になった。
「おはようシンジ君、気分はどう?」
僕の体液にまみれたままのシンジ君がベッドの上で目を覚ました。さっきシンジ君は気絶してしまったのだ。
話しかけられたシンジ君は寝起きのぼんやりとした目で僕を見つめる。
いっぱい泣いたから目が腫れていた。
何とも思ってない奴からいきなり犯されたのだ、どんなリアクションをするのかと思ったのだけど。
掴みかかられていきなり殺してくれるかもと期待もしたのだけど。
「シンジ、くん?」
オウム返しされた。
僕を見る目には嫌悪も恐怖もなかった。
でも、無感情というわけでもなかった。
キョトンとしていて、無防備。敵意はまるでない感じだった。
あんな事があったのに、ショックじゃなかったのだろうか。少なくともさっきはショックを受けていたように見えたけど。
けれど僕は、やっぱりシンジ君にとって僕がした事がとてもショックだったのだとすぐに知る事になる。
「シンジくんて誰?」
シンジ君はショックのあまり記憶を失ってしまったらしかった。
演技にはとても思えなかったし、そもそもシンジ君がそんな器用な事ができるとは思えない。
最初の予定と違ってしまったがこれはこれで、と僕は思い直してニッコリと笑いかけた。
「君は碇シンジ君。僕は渚カヲル。僕たちは恋人同士なんだよ。」
シンジ君には、僕たちはこの世界で生き残ってしまったただ二人だけの人類なのだと教えた。
記憶がないのは好都合だった。
言葉や、生活するのに必要な知識は失われていなかったものの、今まで出会ったヒトたちの事や出来事、シンジ君が同じヒトに対して心の壁を作る原因までも忘れてしまったようだった。
何もわからないシンジ君はまるで今生まれたばかりで、素直で純粋だった。
僕が言った事は何でもあっさり信じるし、何をしても笑って受け入れてくれた。前は人工呼吸をしただけでおかしい、と言って大袈裟に拒絶していたのに。"常識"の無いシンジ君はとても良い。
ただ、セックスだけはしなかった。
セックスをして、ショックで記憶を取り戻されたら嫌だったからだ。
シンジ君だって思い出したくないはずだ。辛いばっかりの記憶なんか。
僕はこの世界でシンジ君を幸せにしたいと思った。
最初はシンジ君を独占したくてここへ閉じ込めたのだけど、考えてみれば、ここにいればシンジ君だって誰からも傷付けられずに済むのだ。お互いに都合が良い。
シンジ君が辛い思いをしないように毎日楽しい事をしよう。
毎日笑わせてあげよう。
現実の世界で人類が補完されようと僕らだけはここにいて、二人だけで楽しく過ごそう。
「カヲル君、今、何を考えてるの?」
僕の手を握りながら隣を歩くシンジ君が不思議そうに首を傾げた。
「ん?何で?」
「え…何か、凄く楽しそうな顔してたから」
シンジ君の事を考えていたんだよと教えると、シンジ君は照れくさそうに笑ってそうなんだ、と言った。
愛らしい、シンジ君。
僕は胸の中に何かが沸き上がるのを感じた。
繋いだ手をグイと引っ張って驚いた顔をするシンジ君を引き寄せる。
「ねぇシンジ君、踊ろっか!」
オワリ。
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(・Д・)あのぅ…質問なんですけどこれ何エンドなんですか?(え)
10.07.03