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□世界の中心で愛を叫びたい獣たち
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※貞と庵のカヲル君たちの会話




貞カヲル「シンジ君にフラれた」
庵カヲル「またなのかい」

貞カヲル「ツンジ君はいつデレるんだろう。君んとこのシンジ君は年中無休でデレてるってのに」
庵カヲル「おそらくは君にも問題があるんじゃないかと僕は思う」

貞カヲル「僕の何が悪いっていうのさ」
庵カヲル「アピールの仕方さ」

貞カヲル「アピール?」
庵カヲル「シンジ君を好きだと思う気持ちを表現したい時、君はどうする?」

貞カヲル「好きだって言う。あと手を握ったり抱きしめる。」
庵カヲル「うん、行為自体に問題はないと思うけれど、雰囲気作りはちゃんとしているかい?何の脈絡もなく突然していないかい?」

貞カヲル「雰囲気って何」
庵カヲル「…やはり思った通りか」

貞カヲル「何だよ」
庵カヲル「僕のシンジ君も君のところのシンジ君も、ツンデレ具合は違えど繊細なところは共通しているし、むしろ過呼吸を起こす辺りは君のところのシンジ君は僕のシンジ君よりも心に脆い部分があるのかもしれないよね」

貞カヲル「だから何なんだよ」
庵カヲル「つまりもっと扱いに気をつけなければいけないと言いたいんだ」

貞カヲル「一応大切にしてるつもりだけど…。無理矢理襲いたいのも、ベロチューだってちゃんと我慢してるし…」
庵カヲル「それならもっと大切にしないと」

貞カヲル「もっとって何。わかりやすく言ってくれない?君が結局何を言いたいのかわからない」
庵カヲル「つまり、シンジ君は君が思うよりずっとデリケートだという事さ。例えば君がシンジ君の手を握ったりした時、何と言われる?」

貞カヲル「最初はやめろとか言われて睨まれてたけど最近は無言ではねのけられる。目も合わせずに」
庵カヲル「それは大概の場合公共の場であったり周囲に人がいた時であったりしないかい」

貞カヲル「する」
庵カヲル「…それがいけないんだ」

貞カヲル「何で?だってシンジ君、そもそも僕と二人きりになろうとしないんだよ。しょうがないじゃないか」
庵カヲル「シンジ君はデリケートだと言ったろう?君と違ってシンジ君は人目を気にするのさ。恥ずかしいんだよ。」

貞カヲル「怒る割にいつも顔が赤いから、実はただの照れ隠しかと思ってたんだけど」
庵カヲル「うん、恥ずかしがってもいるし怒ってもいると思うよ。そんな事を毎日すればウザがられる事山の如しさ」

貞カヲル「がーん」
庵カヲル「僕もね、君のところのシンジ君が君を見る目を見た事があるのだけど…。あれはマズいと思うよ。本当にウザがっている目だったよ。」

貞カヲル「嘘だ嘘だ嘘だ、シンジ君が僕をウザがっているなんてそんなの嘘だ!」
庵カヲル「事実だよ、受け止めるんだ。」

貞カヲル「僕はどうすれば…どうすれば良い?」
庵カヲル「大丈夫、一緒に考えてあげるよ。別の世界の事といえど渚カヲルと碇シンジが険悪な仲だなんて聞くのは忍びないからね」

貞カヲル「ありがとう。君の事いつも露出狂の変態ナルシストだと思ってたけど流石は別の世界の僕。とても良い奴だ」
庵カヲル「………。君のそういう、思っている事を全て口に出すところは最優先で治すべきだと思うよ」

貞カヲル「それでまず何をすればいいかな」
庵カヲル「まずはシンジ君の信頼を取り戻すところから始めるべきだね。もっとも、元々信頼があったかどうかは怪しいけれど」

貞カヲル「何か棘を感じた」
庵カヲル「一旦、君からシンジ君に話しかけるのを止めるんだ。それから、シンジ君に興味を持っている素振りをするのを一切止めてごらん。無関係を装うんだ」

貞カヲル「駆け引きってヤツ?」
庵カヲル「いや…とりあえず最悪な関係からの回復を狙う。まず、出会い頭にウザそうな目をされない為にね」

貞カヲル「………さ、されてないよそんな目」
庵カヲル「とにかくそのように」




【一週間後】




貞カヲル「シンジ君から話しかけてくるようになった!!」
庵カヲル「ごらん、言った通りだろう」

貞カヲル「しかも何かやたらしおらしいんだけど!」
庵カヲル「不安になったんだろうね。君から愛想を尽かされたんじゃないかって。それに、シンジ君は寂しがり屋だから。」

貞カヲル「素っ気なくするのは胸が痛むけどああいうシンジ君が見れるならたまには良いかもしれない…!」
庵カヲル「今回の事でシンジ君は君の大切さに気付いたはずだよ。」

貞カヲル「じゃあ、またいつも通りに…」
庵カヲル「いや、まだダメだよ。次のステップに移ろう」

貞カヲル「次のステップ!?」
庵カヲル「ここでようやく雰囲気作りのレクチャーに入れる」

貞カヲル「ああ、そういえば雰囲気作りとか言ってたよね」
庵カヲル「ここからが本番だからね、真面目に聞くんだよ」

貞カヲル「でも僕、夕暮れの湖で首のない石像に乗って鼻歌とかはマジで無理なんだけど」
庵カヲル「上級者のやり方を丸ままパクれとは言わないさ。」

貞カヲル「じょーきゅーしゃって」
庵カヲル「確かに素人には難しいだろうからね」

貞カヲル「え…いや…まぁいいや…。」
庵カヲル「君ができる事は、まず、そのやたら大きな口を閉じる事と視線を流す事」

貞カヲル「ちょ、口を閉じるとか何」
庵カヲル「君はどうもデリカシーに欠ける。それがシンジ君の神経を逆撫でしている節がある」

貞カヲル「だいたい、僕の口がデカいって事は君の口だってデカいって事だよ」
庵カヲル「とにかく、なるべく黙っている事。そしてシンジ君への愛は視線で訴える事。いいね?」

貞カヲル「…わかった」
庵カヲル「けど決して凝視してはいけない。あくまでもさりげなく、シンジ君が気付いたらすぐに目をそらす。そして、時々はそのまま見つめ合う」

貞カヲル「???は?もう一回言ってくれる?」
庵カヲル「とにかく、そのように。」




【三日後】




貞カヲル「シンジ君が僕を見る時頬を染めるようになった!!」
庵カヲル「ごらん、言った通りだろう」

貞カヲル「凄い可愛いよっ!凄い可愛いよっ!ギューッてしてチューしたい!!」
庵カヲル「フ、君は外見だけは文句なしの一級品だからね。性別に関してやたらこだわる君のところのシンジ君と言えど美しい者からの絶対的熱視線は無視できないさ」

貞カヲル「うわぁ…出たナルシスト」
庵カヲル「では最終段階に移ろう。シンジ君をその気にさせる会話術さ」

貞カヲル「でも僕、意味不明でポエミーなセリフを連発するとかはマジで無理なんだけど」
庵カヲル「勿論、ちゃんと君のレベルまで落とすから大丈夫だよ」

貞カヲル「うわぁ…上から目線だ」
庵カヲル「まず、シンジ君を誉めてごらん」

貞カヲル「シンジ君て超カッコE!足長いよね!」
庵カヲル「…」

貞カヲル「男らしい!性格も明るいし頼りになる!」
庵カヲル「…」

貞カヲル「碇司令が影で君の自慢してるらしいって噂で聞いたよ!」
庵カヲル「…」

貞カヲル「あとはえーとえーと…。ん?ちょっと、何寝てんの?人が一生懸命やってんのにさ」
庵カヲル「…いや…寝ていたわけではなくてちょっと…目眩がして…」

貞カヲル「大丈夫?」
庵カヲル「大丈夫…君の稚拙さに驚いただけさ」

貞カヲル「君失礼だな」
庵カヲル「いいかい、そんな事を言っては逆にシンジ君を怒らせてしまうよ。」

貞カヲル「何で?誉めてんのに」
庵カヲル「嘘が見え見えだからだよ」

貞カヲル「だってシンジ君て可愛いって言うと怒るんだよ!」
庵カヲル「とにかく君のやり方ではダメだ。…君はシンジ君のどういったところに魅力を感じる?」

貞カヲル「全部」
庵カヲル「うん、気持ちはわかるよ。じゃあ、一つ一つ挙げていったらどうだい」

貞カヲル「普段は冷たいのに時々凄い優しいとことか料理がうまいとことか笑った顔可愛すぎなとことか口に出さないけどさり気なく寂しがりなとことか」
庵カヲル「そうだね、そういう素直に思った気持ちをその時々にちゃんと口に出して言えば良いんだよ。例えば、シンジ君が作ったご飯を口にした時、とてもおいしいと誉める。優しくしてもらったら嬉しい、ありがとうと言う。」

貞カヲル「そんなもんなの?」
庵カヲル「あとは、君が余計な事を言わなければ自然とうまくいくはずだよ」

貞カヲル「僕は君に会うために生まれてきたとか言わなくていいの?」
庵カヲル「それは上級者向けだからまだ君には無理だ」

貞カヲル「………まぁ、うん、いいけど別に」
庵カヲル「自分の好意をなるべく自然に伝える事。それに、前回やった"視線"を加えれば尚良い。」

貞カヲル「成る程!やってみる!!」
庵カヲル「頑張って」




【次の日】




貞カヲル「シンジ君にフラれた」
庵カヲル「!?」

貞カヲル「しかも殴られた」
庵カヲル「い、一体何をしたんだい…」

貞カヲル「プールの授業中に、シンジ君の乳首が惜しげもなく晒されてたんだ」
庵カヲル「…」

貞カヲル「だから、可愛いなぁって思って、シンジ君の乳首を人差し指で押しながら君の乳首は100万ボルト!って誉めたんだ」
庵カヲル「…」

貞カヲル「ねぇ、聞いてる?何寝てんの?」
庵カヲル「寝てないよ…一瞬…気を失っただけ…さ」

貞カヲル「大丈夫?」
庵カヲル「いや、ちょっと今回はまだ頭がグラつくかな…」

貞カヲル「結局君のアドバイス役に立たなかったね。あ〜あ、シンジ君どうやったら振り向いてくれるんだろ」
庵カヲル「………。」

貞カヲル「考えてみたらさぁ、君は僕と同じ事してるのにうまくいってるよね」
庵カヲル「?」

貞カヲル「人前でも好きって言ったり手握ったり抱きついたり果てはキスしたりしてるじゃん」
庵カヲル「…僕のシンジ君は僕の全てを受け入れてくれるからね」

貞カヲル「ズルイよ」
庵カヲル「むしろシンジ君がどこまで受け入れてくれるのか僕なりに日々試しているところがあるかな。」

貞カヲル「凄くむかつく」
庵カヲル「…幸せすぎてGOMEN☆」

貞カヲル「永遠にさようなら」
庵カヲル「君に幸あれ」




【後日】




ピッポッパッ…




トゥルルルル…




庵カヲル「あ、もしもし、貞の方のシンジ君かい?庵の方のカヲルだよ。久しぶりだね。かくかくしかじかな訳で彼も決して悪気があったわけじゃないから…うん、だからあまり邪険にしないであげてくれないかな。うん、お願いするね。うん、じゃあ…」




ピッ。




庵カヲル「ふぅ。これで少しは彼にも幸せが…」
庵シンジ「………。」

庵カヲル「おや?シンジ君。こんなところで手なんか合わせてどうしたんだい」
庵シンジ「…実はさっき、貞の方のカヲル君が僕に、人の誉め方について相談してきて」

庵カヲル「え…?そ、それで?」
庵シンジ「うん…何ていうか…貞の方の僕を誉めたいみたいなんだけど…えっと…僕…あの、あまりにも一生懸命だから…い、言えなくて…………。変だって…」

庵カヲル「…わかるよ」
庵シンジ「それであの、せめて前歯に手を合わせておこうかと」

庵カヲル「…」
庵シンジ「…」

庵カヲル「…付き合うよ」
庵シンジ「うん…」

庵カヲル「…」
庵シンジ「…」




合掌。




おわり。

+++

(´∀`)いろいろ申し訳ない感じ。

カヲル君に渚君の前歯に合掌させたかっただけ文。

10.05.05
 

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