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□名探偵碇少年の事件簿
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※シンジ君が少年探偵




昼下がりの午後―…

その日、碇シンジは自宅、リビングの窓際でアールグレイを啜りながら室内にはエルガーのニムロッドアダージョ(エニグマ変奏曲)などを流し、足を組んでゆったりと体をリクライニングチェアーに沈ませていた―――…

穏やかな時間

流れる雲を眺めながらこの平和な一時を噛み締める。

忙しない日常の中、こうしていられるのも束の間なのだ。何故なら彼は…

『RRRRRR…RRRRRR…』

突然、テーブルの上の備え付け電話が鳴った。

小さくため息を吐いたシンジは、ティーカップを受け皿に静かな動作で戻す。立ち上がってそれから、それをテーブルに置いて入れ替わりに受話器を取り、耳にあてる。

「―――はい、碇探偵事務所です」




碇シンジは探偵だった。




それも天才と名高い探偵である。シンジが天才と呼ばれる由縁は彼がまだ14歳の少年であるにも関わらず数々の難事件を解決に導いている点であろう。

「…何だって!?そ、そんな!今行く!!」

受話器からの声にシンジの表情が険しくなる。今日も、何やら事件が起きたようだ。




***




現場はとある豪邸だった。

メイドに案内され、一面大理石の床、高い天井にシャンデリアが吊されたいかにもな広い玄関を抜けてこれまた無駄に広いリビングに足を踏み入れると、この家の子どもらしき、年にして小学校高学年といったところだろうか、黒髪の少年と、年配の使用人の男、警官服を纏った人間が5人、それから見知った顔が二人いた。

「また出たわね!探偵気取りのぶあかシンジッッ!!」

一人は少女だった。シンジの幼なじみであり同じ学校のクラスメイトでもある惣流・アスカ・ラングレーだ。

何故そんな彼女が事件の現場にいるのかというと、

「どこから嗅ぎ付けて来るのかしら!警察に任せてドシロウトは引っ込んでなさいよ!毎回毎回邪魔しに来て、天才なんて言われて良い気になってんじゃないわよ!!」

アスカは警察官であり警部であった。シンジと同じく彼女もまた、天才と呼ばれる14歳であり、今までに難事件をいくつも解決に導いている。

そして、幼なじみとはいえ、探偵として手柄をたてるシンジをアスカは良く思っていなかった。…自分の手柄が減るからである。

シンジの事は嫌いではない。しかし警察署長の母を持つアスカにとって事件解決は忙しくて滅多にかまってもらえない母親に誉めてもらえる唯一の手段であった。

父親を早くに亡くしているアスカには、唯一の家族である母親に誉めてもらえる事。それはとても重要な事であり存在意義でもあるのだ。

それなので現場でシンジと顔を突き合わせる時はいつも敵意を剥き出し、目は吊り上がっている。

「シンジ君………!」

もう一人は少年だった。こちらも同じ学校のクラスメイトであり、そして、シンジの恋人でもある渚カヲルである。

カヲルは出会った瞬間、気が付けば名も聞かぬ内にシンジへ愛を告白していたという。所謂一目惚れというものだったらしい。

同性からの突然の告白に最初は戸惑ったシンジだったが、とりあえずはお友だちから始め、次第に、美しく中性的な雰囲気を醸し出すカヲルに惹かれていき、更に少女漫画よろしくな展開もいろいろ経て今ではすっかりラブラブカップルである。

ちなみに何故そのカヲルがここにいるのかと言うと、カヲルはこの家の子どもの家庭教師をしているのだ。

「…何だか…よくわからない事になってしまったんだ」

普段は常に鼻歌を口ずさみ、微笑みを絶やさないカヲルであったが、今は困ったような申し訳なさそうな顔をしていた。

「一体何があったの?」

シンジはカヲルを心配し、その手を握った。(アスカが気持ち悪いと騒いだ)

そもそもシンジのところへきた電話は『カヲルが犯罪を犯したらしい』という、仲間からの情報だった。勿論シンジはそんな事は間違いだと信じているし、無実を晴らす気でこの場に来ている。

「いつものように勉強を教えに来て、そして廊下に落ちていた物を偶然拾ったら、何故か下着泥棒にされてしまった」

カヲルがシンジの手を握り返しながらそう答えると、年配の使用人がシンジに向かってズイと一歩進み出た。

「詳しくはワタクシが説明いたしましょう。…少年探偵さん」

使用人は優しく笑うとシンジの肩に手を置き、ソファーへと丁寧にエスコートして座らせた。それぞれ別の理由でカヲルとアスカが片眉を釣り上げた。

「最近坊ちゃまの下着が不自然な程日に日に減っていましてね、坊ちゃまを始め使用人共々訝しがっていたのです。…そこへ家庭教師の渚さんです。先ほど彼が坊ちゃまの下着を握りしめている現場をメイドが目撃したのですよ。現行犯というヤツですな」

待って下さい、シンジとカヲルが同時に声を上げた。

「僕は廊下に落ちていた物を拾っただけです!」

カヲルが言って、

「カヲル君がそんな事するはずありません!何のメリットもないのに!」

シンジが言った。

「メリットがないですって?あるでしょ、カヲルはシンジなんかが好きな変態ナルシスホモよ。小さくて可愛い男の子の下着!十分メリットあるじゃないの」

そこへアスカがズバリ突っ込みを入れた。瞬間、シンジとカヲルの鋭い視線がそのアスカに向けられる。

「僕の事はともかく、シンジ君を侮辱するのは許さないよ。」

カヲルが言って、

「カヲル君は変態じゃないしホモでもないよ!それに、浮気みたいな事もしない!!」

シンジが言った。

「アンタら二人ともウザすぎ…。大体、カヲルの性癖を全部知り尽くしてるような口を叩くけどシンジ、アンタ本当はカヲルにうまく騙されてるだけかもしんないじゃん。アンタが知らないとこで本当は見境なく浮気しまくってるかもしれないわよぉ」
「そんなわけないだろ!カヲル君は…、とにかくカヲル君は犯人じゃないっ!!」

シンジとカヲルのバカップルぶりにウンザリしていたアスカだったが、自分の挑発に取り乱し始めたシンジを見て、少し気分が良くなったようだった。

「証拠はあるの?そんなに自信満々ならカヲルが犯人じゃないって証拠、あるんでしょうね?…ほら見せてみなさいよ。もっとも、あればの話だけどね!」

口の端を上げて更に挑発を続ける。

「…証拠なら、あるよ」
「ハン?」

「カヲル君は…僕にしか欲情しないんだ」

しかしそうして返ってきたシンジからの言葉に、アスカは呆れとも哀れみとも感じられるような目眩に襲われた。

「コイツ本当に馬鹿だ…」

いつもは他人を卑下する為に口にする言葉を、今は誰にともなく、思わず、というように自然と口から漏らした。

「シンジ君が言っている事は本当さ。僕は生まれてこの方シンジ君にしか性的興奮を覚えた事がない。何なら証拠を見せようか。」

カヲルの言葉に、再びアスカを目眩が襲った。倒れてしまいたいところだったが、

「証拠を見せた瞬間に公然わいせつ罪で現行犯逮捕してやる」

警告という名の突っ込みを入れる為何とか耐えた。

「ただでさえ不利な状況で証拠を見せるのも禁止だなんて…」
「黙れ変態」

シン、と静まり返る室内を重苦しい空気が包み込む。

「誰がどう見ても、犯人が渚さんなのは明白でございましょう。これ以上ここでどうこうしていても時間の無駄なのでは…?」

誰も彼もが黙り込む中、使用人の男が朗らかに提案した。待って、と声を上げシンジが立ち上がる。

「絶対カヲル君じゃないんです…違うんです…!」

今にも泣き出しそうな声で切に訴えるも、アスカの容赦ない言葉がシンジを押し黙らせた。

「それならただ違う違うって言ってないで私たちが納得できるようにカヲルが犯人じゃないって証明してみせなさいよ。アンタ探偵なんでしょ?」
「く…っ」

証明といっても唯一の証明方法は先程禁止されてしまった。シンジとカヲルに、絶対絶命のピンチが訪れた。

「碇君!」




その時である。




「綾波!?」

CR最後のシ者における初号機リーチ、発展後に零号機が助けに来た時よろしく(解らないお嬢様はごめんちゃい☆)水色のショートヘアを揺らしながら綾波レイが颯爽と現れた。

レイはシンジの探偵活動をサポートする様々な発明品を作る天才発明少女である。どうやら今回もシンジのピンチを悟って来てくれたようだ。…ちなみにやっぱりシンジと同じ学校のクラスメイトであり、カヲルのピンチをいち早く察知してシンジに知らせたのも彼女だ。

「受け取って!碇君」

そのレイが、シンジに向かって小さな何かを投げて寄越した。シンジは投げられたものをハッシと受け取り、そして眉を寄せる。

「め、眼鏡?」

シンジのサポートをするレイを勿論アスカが快く思っている訳がなく、突然現れたレイに何かギャンギャン喚いていたがレイは鮮やかなまでにスルーして、シンジに投げた、どうみても"眼鏡"についての説明を始めた。

「少年探偵不思議道具、委員長眼鏡。これをかけると誰でもその場の委員長になれるの」

アスカを始め、警察官、使用人、子ども、カヲルまでが頭の上にクエスチョンマークを浮かべたが、唯一シンジだけは雷にでも撃たれたような顔をして成る程!と叫んだ。

「ありがとう綾波、僕、やってみるよ!」

シンジは頷いて、レイ以外の誰もが首を傾げる中、眼鏡を装着した。

「はいみんな静かにして―――!」

そして今まで泣き出しそうな声ばかり出していたのが嘘のように堂々とした態度で叫んだ。

「今からホームルームを始めます!今回誰かがクラスメイトの下着を盗んでしまった件について話し合う為です!」

左手は腰に、右手は眼鏡のフレーム。その姿はまさしく委員長キャラである。

「さぁ、みんな目を瞑って!みんなだよ!こっそり薄目にしたら駄目だからねっ!!そして盗んだ子は正直に手を挙げて!怒らないから!!」

突然目の前で起こった出来事に自分の中の何かが限界に達したアスカが、手ではなく怒りの声を上げようとした。碇少年に怒りの声を。…しかし先に声を上げたのは、別の人物だった。

「すいません!ワタクシがやりましたァ!!」

室内にいた人間、全員の視線が一気にそちらへと集まる。そこにいたのは何と、あまりにも予想外過ぎる事に、年配の使用人だった。

「ワタクシ黒髪少年が大好きなんですゥ!坊ちゃまのあまりの愛らしさについ我慢できず魔が差して…!渚さんが来るのを見計らって廊下に目立つように下着を落としておいたのもワタクシです!…自分の罪をその辺に適当にいた渚さんに押し付けてしまい、大変申し訳ありませんでしたァ!!」

使用人は泣き叫びながらシンジに土下座をした。使用人はどうやら少年好きとは言っても銀髪の美少年には興味がないらしかった。

「わかればいいよ。罪は刑務所で償ってくるんだよ?あと、その前にカヲル君にもちゃんと謝ってね」
「ハイッ、勿論でございますゥ!!」

罪を告白し、カヲルにも土下座を始めた使用人に少し呆けていたアスカだったが、やがて我に返ると、ついに怒りが爆発した。

「アンタ馬鹿ぁあッ?!意味わかんない!!何なのよ!!何でいきなりこーなんのよっ!?何でそんな簡単に自白してんのよォオ!!」

土下座する使用人の胸ぐらを掴んでガクガクと乱暴に揺すり出したアスカに、使用人は涙を流し、そして恍惚とした表情でこう言った。

「だってあんな可愛らしい黒髪少年が眼鏡をかけてワタクシめに命令してるんですよ?眼鏡っ子黒髪少年がですよ?…従わない理由がありますか?」
「この変態野郎ぉッッ!!」

アスカが使用人の顔に紅葉を作る音と共に、今回の事件は無事解決した。

また一つ、名探偵碇少年の伝説が出来上がった瞬間だった。




おめでとう碇シンジ!ありがとう碇シンジ!これからも頑張れ碇シンジ!明日も難事件が君を待っている!!




+++

自分で言うのもなんだけど…

(*^p^*)バッカスwwww

推理wwしてないwwww

何て言うか話の内容っていうか設定に萌えを感じて欲しかったのでした。

10.04.25
 

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