Short
□懐妊*
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※シンジ君が孕まされる
NOT女体
目が覚めた。
カーテンからはうっすら日の光が差し込んでいる。もう朝なんだろう。
それより喉がカラカラだ。
何か飲もう…そう思ってベッドからゆっくり、慎重に起き上がる。
僕を抱きしめて眠るカヲル君を起こさないように、絡みつく腕からそっと抜け出して。
ここはカヲル君の部屋で、今僕が座ってるのはカヲル君のベッド。隣には何も着てないカヲル君がいて、僕も今…何も、着てない。
お泊まりを、した。…昨日。
今回が初めてじゃない。
もう、長い間数え切れないくらいこういう事があって、二人きりの朝を何回も迎えている。
つまり僕らは『そういう』関係。
でもミサトさんやアスカたちにはカヲル君とそういう関係なのもこういう事をしているのもナイショ。ただ、友だちの家に"普通の"お泊まりをしてるって事になってる。カヲル君はちょっと不満みたいだけど、でもバレたらいろいろと大変そうだからね。僕自身、中学生でこういう事をするのがイケナイ事だっていう自覚があるから後ろめたいのもあるんだけど…
だからこの関係を周りに発表するのはもう少し大人になったらねって、指切りしたんだ。
僕はいつも、こういう朝をカヲル君の部屋で迎えたら、夜までには何事もなかったような顔を作ってミサトさんの家に帰る。今日だってそのつもりだった。
でも…今回それは無理、みたいだ。
「?」
起き上がった時何だか、何かがおかしい事に気付く。
何がおかしいって…そう、お腹。お腹が何か変なんだ。だけど何が変なんだろう?
今まで感じた事のないような違和感だった。
「………。」
そして正体不明のソレは、何の覚悟もない僕の目の前に突然現れる。
お腹の状態を確かめるべく下半身を覆うシーツをそっと捲り上げた僕は
「え…!?」
静かにする事も忘れ、思わず声を上げてしまった。
でもそれは仕方がない事だと思う。
だって昨日と決定的に違ったんだ。
何がって、それは、僕の…体…
「何これ…何これ…?!」
僕のお腹、が、
「何でこんなになってるの…!?」
大きく、なってた。
食べ過ぎてお腹がいっぱいになって膨らんだ、とかそういうレベルじゃなくて、明らかに異常。
まるで妊娠してる人みたいな大きさ。
「妊…娠…」
そう言えば。
僕は自分のお腹に動揺しながらも、昨日、カヲル君が少し変だった事を思い出した。
***
昨日、というかカヲル君はここ数日、ボンヤリしている事が多かった。
「…」
話をしている途中、深刻そうな顔をして突然黙ってしまう事もしばしば。
「?」
放課後、二人で歩く帰り道。
今日あった事について僕が話していたらまたカヲル君が黙ってしまった。
「カヲル、君…?」
「…あ、ああ、ごめんねシンジ君。何だったかな…?」
呼びかければ、ハッとして申し訳なさそうに笑顔を向けてくる。
ここ数日間何度も繰り返されたやりとり。
僕はカヲル君が心配だった。いつものように笑っているつもりなんだろうけど、日に日に弱々しくなっていくそれ。明らかに無理をしている。
僕はカヲル君が心配だった。
「ねぇ…大丈夫?カヲル君、最近ちょっと変だよ。体、どこか悪いの?それとも何か悩みがあるの?」
自分からなかなか話さないって事は、もしかしたら話しづらい事なのかもって、今まで聞くのを躊躇っていたけど、もう我慢できない。
こんなに困っていそうなカヲル君を、黙って放っておく事なんかできない。
だから思い切って聞いてみた。
「何かあるなら言ってみてよ。って言っても僕じゃ何の役にも立てないかもしれないけど…でも話を聞くくらいならできるよ」
「大した…事じゃないんだ」
悪いけどとてもそうは見えない。…きっと僕に気を遣ってくれてるんだ。
このまま、いつもなら「カヲル君がそう言うなら…」で話を流してしまうところだけど、今回ばかりは引きたくない。
ドキドキしながらも少し強気に出てみる事にする。
「僕には言えない事?」
「…いや…違うんだ、ごめん。」
違う、と言いながらもカヲル君はやっぱり言いにくそうにしていた。
「僕にできる事なら何でもするよ…?」
いつもは逆の立場で。
悩んだり困ったりしているのは僕の方。…カヲル君がこんな風に参っているのは本当に珍しい…というか、初めて見るかもしれない。
力になりたい。
悩みを分かち合いたい。
いつも優しくしてもらってるんだから、たまには僕もカヲル君に優しくしたい。
カヲル君に笑顔が戻るなら、何だってしてあげたいんだ。
僕の中で一種の使命感が湧き上がる。
「何、でも…?」
「うん、何でもするよ。」
何でもする、という僕の言葉にカヲル君が反応した。
「本当に?」
「うん」
さまよわせていた目を、僕に向ける。
とても深刻そうな目だ。
「…シンジ君…」
「うん」
カヲル君はどうやら僕に全てを明かしてくれる気になったらしい。
僕も真剣にカヲル君を見返す。
「君に嫌がられる事を覚悟して言ってみるんだ…」
「大丈夫だよ。何を言われても僕、カヲル君を嫌いになんてならないから言ってみて?」
「…ありがとう」
念を押すなんてそんなに深刻な事なんだろうか。…でも、あのカヲル君が悩む事なんだ、ただ事じゃないんだろう。
「子ども…が、欲しいんだ。」
「へ?」
…こども?
聞き間違いじゃなかったら今、子どもが欲しい…とか言わなかった?
「やっぱり、嫌…かい?」
「え…あ…嫌っていうか…だ、誰の?」
シュンとするカヲル君に僕は笑いかける事ができず、ただ顔を引きつらせて首を傾げた。
子どもが欲しいって言うのはつまり純粋に育ててみたいとか言う意味?
…それとも子作りしたいって言う意味…?
後者なら僕は無理だから、誰か女の子と作りたいって事になるわけ…だよね…
それは…やだ…な…
「…。」
急に胸がズキズキして、苦しくなった。
僕はどう足掻いたって男だから、子どもを作る過程の真似事はできても、お腹に子どもを宿す事はできないんだ。
「誰のって…もちろん君と僕の、に決まっているじゃないか」
けれどその胸のズキズキを、カヲル君はあっさり払拭した。
「え…ええっ?!カヲル君と…僕の!?」
凄く驚いたから、かなりオーバーリアクションになってしまった。
だってカヲル君は成績優秀な人で…つまり…頭が良い人なわけで。真面目な顔でそんなありえない冗談みたいな事を言うものだから。
「?」
そんな僕に今度はカヲル君が首を傾げる。
「当たり前じゃないか。子どもは好きな人と作るもので、僕が好きなのはシンジ君だけなんだから。」
好きなのはシンジ君だけ。
その言葉に思わず嬉しくなってしまうが、ここはとりあえず言う事は言っておこう。
「だ、だって僕男だから子どもなんてできないよ…?」
僕の当たり前なツッコミに、でもカヲル君はキョトンとしてそのまま数分固まってしまった。…何か考えてるみたいだ。
「………。」
まさかとは思うけど、カヲル君は僕と本気で子どもが作れる、なんて思ってたり…しない…よね?
ま…まさかね。
「そんな事は関係ないと言ったら?」
「え?」
突然カヲル君が会話を再開させた。
「もし性別に関係なくできるなら、君は産んでくれるかい?僕の子どもを」
冗談、なんだろうけど…。でもカヲル君の顔は至って真面目だった。
もしも、の話で僕を試してるのかな?
「…いいよ」
まぁ、もちろん実際、僕に子どもなんかできるはずない。
だから僕は、深く考えずに即答した。
そう言えばカヲル君が元気になると思ったから。
「本当、に?」
「うん、カヲル君とならいいよ」
「シンジ君…!」
カヲル君は僕の予想通り、とても嬉しそうに笑ってくれた。
久しぶりに見るカヲル君の自然な笑顔に僕もつられて笑う。
「ありがとう、嬉しいよ…!」
感激、と言った様子で強く抱きしめられた。
辺りに人がいないか確認して、僕もカヲル君の背中に腕を回す。
何はともあれ良かった。カヲル君が元気になって。
その後僕らは手を繋いで、そのままカヲル君の部屋の、カヲル君のベッドの上に直行した。
さっきの事で気分が盛り上がっていたのかカヲル君はあんまり余裕がないみたいで、ベッドの上に二人して倒れ込むなりいつもより乱暴にキスをしてきた。それから服を脱がす手つきも焦っている感じでちょっとびっくりする。…もしかしてカヲル君、ずっとしたかったけど我慢してた、のかな…?
いつもはいろいろ触ったりするのにそれも省略して、早々に僕らは繋がった。
「ねぇ、子ども、名前どうしようか…っ?」
僕の体を揺さぶりながらカヲル君は恍惚とした表情で何回もそう聞いてきた。
「一緒にっ、考えようね…シンジ、君っ!」
とても嬉しそうなカヲル君に、でも僕は言葉を返す事はできなかった。揺さぶられる度に意味のない声を発する事しか。
例え応える事ができたとしても僕は返事に困ったと思う。そもそも子どもなんてできるはずないんだから。それに、冗談に付き合うというにはネタが恥ずかしすぎる。
とにかくカヲル君はイメージプレイとかいうので楽しんでいるのだろうと頭の隅で思った。
思ってた。
この大きなお腹を見るまでは。
「ほん…もの?」
自分のものとは思えないお腹のふくらみをさすると、残念ながら手の感触が伝わってきた。
有り得ない。
何か、病気なのかもしれない。
子どもがいる?
病気にしたっていきなりこんな…
子どもがいるにしたって昨日の今日でこんな風になるはずは…
やっぱり病気?
男に子どもはできない
「………。」
グルグルと、膨らんだお腹の原因について考えた僕は
「そうか!」
やがて一つの可能性に辿り着いた。
「これは夢、夢なんだ!」
もう、カヲル君が昨日あんな事言うから…なんて笑顔で呟きながら自分の頬を抓る。
「いたっ!」
痛い。…おかしいな、夢なのに痛みがある。
「ふふ、随分面白い事をしているんだね」
夢じゃないと認めたくない僕が今度は痛みの原因について考え出すと、隣から楽しそうな声がしてそちらを振り返る。
「カヲル君!」
「おはよう、シンジ君」
カヲル君は挨拶してからゆっくり起き上がり、僕を抱き締めた。
「今日は、この子の名前をどうするか決めようね」
それからウットリと僕のお腹を手のひらで撫でる。
「カ…カヲル、く…あの、これ本当に…」
「僕らの子どもだよ」
…夢じゃ、ない。何かの冗談ですらない。
カヲル君から当たり前のように言われると不思議と急に、この非現実的な大きなお腹が『現実』という言葉を伴った。
男には子どもができないっていうのは嘘だったの?
今までは偶然できなかっただけ?
子どもってこんなに早く育つものなの?
僕の常識は、間違ってたの?
でも、それよりも今は…
「どうしよう…どうしよう…僕、家に…帰れない…」
これからどうしたらいいだろう。ミサトさんやアスカ、綾波に………父さんに僕が妊娠した事を、知られたくない。
男で、しかも中学生で妊娠したなんて…
「大丈夫、ネルフのみんなに知られなくて済む場所を知っているから、そこへ行こう…」
カヲル君の甘い囁きに僕は頷いた。
その日僕は、カヲル君に連れられて第三新東京市を出た。
終わろ。
+++
もっとカヲル君をヤンデレにしたかった…もっとシンジ君にショックを受けさせたかった…がっくり。
設定とか一応説明しちゃいますと、カヲル君がシンジ君と出会ってからサードインパクト起こす間に結構時間に余裕があり、カヲル君が使徒だとわかる前。更にカヲル君には繁殖期があり、その間生き物なら何にでも植え付けられちゃうミラクル設定。(怖いよ)因みに今回が初☆情期v(ちょw)
(*^p^*)二人はこれからゼーレで過ごすらしいよ。
09.09.12