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□たましいの
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※現代パロ。
生まれ変わり 




衝動、とでもいうのだろうか。

僕はこみ上げてくる感情を抑えきれず、思わず立ち上がっていた。









***




その日は朝から転校生の話題で持ち切りだった。どうやらとても美形がうちのクラスにやって来るらしい。

「ったく、男は転校なんてしてくるなっつーの」
「せや、転校生言うたら美少女って相場は決まっとるもんや」

男友だちは転校生が男だってわかった途端にこうだ。

「無茶苦茶だよ…」

僕はというと…別に、特に何も感じなかった。

今日、美形な転校生がやってくる、そういう噂を聞いてああそうなんだと思った。

きっと誰が来たところで今目の前にいる二人の親友以上に仲良くなる事なんてないんだろうし…

僕には関係のない事だと。

けれど僕のそんな考えは、彼を一目見ただけの一瞬で覆される事となる。




朝のホームルームの時間

クラス中の全員が席に着く中、担任の教師と共に入ってきた知らない学校の制服を纏う少年。

サラサラと揺れる銀色の綺麗な髪、真っ白な肌、赤い瞳。

涼やかに笑う、美しい顔。

「………………………っ!!」

それらが目に入った途端、ドクン、と大きく鈍く心臓が鳴った。

何だこれ、何だこれ?

『    』

僕の中で何かが叫んだ。

『    』

わからない。わからないけど。

『    』

見た事も会った事もない彼を、僕は知っていた。

『    』

ずっと前から痛いくらいに。




「い、碇。どうかしたか?」

先生の戸惑った声。

「あ…」

僕も戸惑った。

クラス中がざわめく。




衝動、とでもいうのだろうか。

僕はこみ上げてくる感情を抑えきれず、思わず立ち上がっていた。

赤い瞳が僕を捉え、そして、僅かに見開かれる。

先生も、クラスのみんなも、何事だろうと僕を見ているがそんなの気にならなかった。

体が震えていた。

彼に、彼に。

どうしようもなく何か言いたい。

何か言わなくちゃ。

「…ぁ………っ、あ…」

口がパクパクと、何か言おうとしている。

『    』

でも何を言って良いかわからない。

『    』

呼びたいのに名前がわからない。

『    』

知っているのに、彼を、知っているのに!どうしてこの口は彼の名を呼ばない!?

『    』

『    』

『    』

視界が歪んだ。頬を何かが伝い落ちた。

「………………ぅ………あ………!」

これは何なんだ。僕はどうしたんだ。

「ぁ…っ………っ。」

相変わらず口は音を上手く発せない。

『    』

まるで言葉そのものを忘れてしまったみたいに。

「き、君は…」

転校生の少年が驚いた顔をしながら近付いて来た。

さっきより近い彼の顔。

見た事がない知らない顔なのに、嗚呼ほら、僕は彼を知っている。僕の中の何かが

『    』

呼んでるんだ、叫んでるんだ、彼の名を。




「………………ぁ…」

驚いた事に、彼も僕の目の前に立つと、口を開けて僕と同じように意味のない『音』を発し出した。

「あれ?…ええと………………………あ………………あ………………?」

目の前の戸惑う顔。何か言いたいけれど、言えないんだ。言葉が出てこないんだ。

僕は確信した。




彼も僕を知っている。




嬉しい!




涙が止まらない。




「あ…会いたかったんだ…ずっと…」

誰かが僕の口を借りて喋った。

自分が何故こんな事を言うのか自分でもわからなかった。

でも、そう、会いたかったんだ。

会った事もない彼に。

いつからかはわからないけれどずっとずっと会いたかったんだ。

僕はやっとそれだけ伝える事ができた。

「………ぁ………き、君の…君の名前を聞いてもいいかな…」

彼はどうしても思いつかない言葉に少し苛立ったように表情を歪めながら、それでも僕の涙を指で拭ってくれた。

「い…かり…碇シンジ…」
「シ…ンジ…?」

僕が名前を教えると、

「シンジ…いかりシンジ…シンジ君…シンジ君…」

彼は何度か確かめるように僕の名前を呟いて

「シンジ君!」
「あ!」

突然、僕を抱きしめた。

「僕はカヲル。渚カヲル。」
「カヲ…ルくん…?」

少し苦しいくらいだったけど、とても気持ちいい腕だった。

「カヲルくん…カヲル君………っ!」

僕も迷わず背中に手を回した。

『    』

そうだ

『カヲル君』

そうだ!そうだ!僕は『カヲル君』を呼んでいたんだ!




この気持ちは何なの?

僕はどうしてこんな事を思うの?









「シンジ君、僕は君に逢うために生まれてきたのかもしれない」









それはきっと、たましいのきおく









END...

09.03.13
 

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