僕、アイドルになります!
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「大人は汚いよ!」
目が覚めると僕はまたどこかの楽屋のソファーに寝かされていて、そして女装させられていた。今日はロリータ風ファッションだ。
「かえ、帰してよっ!!!僕帰る!!!!」
泣きそうになりながらミサトさんに不満を叫ぶと、
「あんた仕事すっぽかす気!?そんな事したらあたし、一生あんたを許さないからね!!」
「ヒィッ!!!」
何と今日は逆ギレされた。
両頬を両手で掴まれ、鬼のような顔で怒鳴られた。
酷い。横暴だよ。人権無視だよ。
「じっとして!」
ショックに固まってガクブルしているとメイクが始まった。
ちくしょうちくしょうちくしょう…!
怖くて逆らえない。明らかに理不尽なのに。
ヘタレな僕の馬鹿―――…!!!
今日は音楽雑誌のインタビューと、撮影だった。
僕は自分では絶対直視できないような乙女チックなポーズをとらされて何枚も写真を撮られた。
何だかんだ言って、争い事や厄介事を避ける性格のせいで淡々と仕事をこなしてしまう自分が憎い。
何やってんだろ僕…
***
仕事が終わった後トイレに行きたくなった僕は、楽屋に戻る前に(勿論だけど)男子トイレに入った。
用を足してそれから、手を洗う。
「はぁ…」
目の前は一面大きな鏡になっていて、疲れた顔の僕が映っている。そしてその少し後ろに女の子が映っていた。
「っ!?」
一瞬見間違いかと思ったが、勢い良く振り返って改めて女の子を確認する。見間違いじゃなかった。残念ながら。
「誰!?チカン?!…じゃない、チジョ!?」
「誰が痴女なのよっ!!!」
スタイルの良い体を仁王立ちにさせ、彼女は立っていた。男子トイレの中で。
赤いロングヘアーにブルーの瞳。日本人離れした顔はいかにも勝ち気なソレ。
よく見れば雑誌やテレビで結構見かける人物だった。
惣流・アスカ・ラングレー。
綾波レイと同じく、最近売れてきているツンデレキャラが売りのアイドルだ。
「惣流…さん、だよね…。こ、ここ男子トイレだけど…って、え、ちょ、何?!」
その彼女が驚愕する僕に突然、ズンズン近づいて来て
「ッ!!」
いきなり頬を打った。
パシン、と乾いた音がトイレに響く。
「あたしはあんたを殴らなきゃならないの!殴らなきゃ気がすまないのよ!!」
「な…何すんだよ!」
「ウルサいッッ!!このポッと出の泥棒ホモ!!」
「ど…っ、ホ…っ!?」
初対面でいきなり殴られる理不尽さに流石の僕も声を荒げるが、彼女、惣流から返って来た言葉に絶句する。
ポッと出の、泥棒、ホモ?
あまりの言葉に脳内処理が遅れ、口をパクパクさせていたら、男子トイレにもう一人女の子が入ってきた。
「今日あなたが受けていた雑誌の取材…本当は彼女が受けるハズだったの…」
水色の、短い髪の美少女。綾波レイ。いつも無表情に近い顔の彼女が今日もやっぱり無表情に近い顔でスルリと惣流の後ろにやって来たのだ。…ねぇ、ここ、男子トイレなんだってば。
「そ、そんなの僕知らないよ…。」
そう、知らない。僕はいきなり連れてこられて無理矢理受けさせられただけだ。恨む相手が違うよ。
「綾波レイ…ッ!!」
そんな僕をスルーして、惣流は今度はキッと綾波を睨み付けた。
「何であんたがここにいんのよ!」
「通りすがりに男子トイレから女の声が聞こえたから…てっきり…」
「てっきり…てっきり何よ!?」
「お楽しみ中かと」
「誰がお楽しみ中なのよ―――ッッ!!!」
「あなた」
何だか知らないけど綾波と惣流が漫才のような喧嘩を始めてしまった。
知り合い?…なのかな。でもこの二人、あんまり仲良くなさそうだけど…
「この人形女!」
「私は人形じゃない」
「ウルサいッッ!!」
パシン、と乾いた音。
惣流が、今度は綾波の頬を打ったのだ。
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