いつかみた夢
□いつかみた夢
1ページ/1ページ
今でも、目をつむると浮かんでくる。
絶え間なく響く、ロイター板を蹴る足音。
床演技の音楽。
掛け声。
平行棒の軋む音。
冷たい床。
張り詰めた空気。
そして、ムッと籠もった、体育館の熱気。
あたしの青春。
あたしの人生。
あのスポーツクラブに、あたしが在った。
器械体操の歴史に、あたしが在った。
あたしと、あなたと。
あたしは行くんだ。
誰よりも上に。
疑いもしなかった、あの夏の情景を
あたしは夏が来る度に思い出すだろう。
そして、生涯忘れない。
形は違えど、同じステージで戦った時代を。
剣を握り、
血をにじませ、
涙を殺して。
それでもあたしは行く。
終わりへの旅へ───