C R E A K Y . C R A D L E
□A C T : 3
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受話器を置いて溜め息をつく主人を見て、使用人は心配そうに眉を寄せた。
「旦那様。今夜はもう、お休みになられては…」
夜の暗闇にポツンと光るスタンドの明りが、この屋敷の主人、ラウルの横顔を照らしている。時刻はまだ午後7時前。外では先程から激しい雨が降り続き、雷が空を駆けていた。
「…いや、大丈夫だ……」
ラウルは顔を上げ、使用人に向けて微笑んだ。
「ケニー様が気に掛りますか?」
「彼に心配など不要だ。本人も望んではいないだろう」
ラウルは窓の外を見た。雨が滝のように窓ガラスを伝っている。降り止む様子はない。昼間聴いたラジオによると、雷雨は乾燥地帯を含む全ての地域で2、3日降り続くそうだ。
使用人は主人の影を眺めながら静かに、続きの言葉を待った。
自分には数多くの部下がいる。彼等は皆、会社にとても忠実であり、それは社長である自分への信頼ともいえるだろう。愛しい妻もいる。彼女を守る為、彼等の期待に答える為ならどんな手段も厭わない。
――そう、誓った。
だが、この場に及んで揺らぐものがある。
「…旦那様?」
沈黙を破るように、使用人がラウルに声を掛けた。ラウルはそれを合図に、我に帰る。
「あ…すまない。やはり今日はもう、休む事にするよ」
ラウルは使用人に退がるように言い、寝室へ向かった。だが、今夜は眠れそうにない。この天候の所為だろうか、酷く頭痛がするのだった。
雨はまだ、止まない。ラウルの憂いも晴れる事はなかった。
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