C R E A K Y . C R A D L E
□A C T : 1
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RuRuRuRu…
「もしもし…アンタか。」
…
「ああ、届いてる。ピンボケしてない資料が欲しかったが…冗談だ。分かってる。」
…
「そうだな。30で引き受けよう。どうだ?」
…
「悪いが、金はそんなに重要じゃない。交渉成立だ。」
受話器を置く。
今月に入って2つ目の仕事だ。仕事内容は『始末』。滅多にある仕事じゃない。
男はおぼろ気な足取りで洗面台に向かった。カランを捻って蛇口から流れ出る水を飲む。口元をタオルで拭きながら時計を見上げると、針は8時45分を示していた。
今日午後4時。
ターゲットが第6地区のメイン通りに現われる。仕事内容は『奪還』。5日前に依頼が入った、今月1つ目の仕事だ。
男はタオルを肩にぶらさげたまま、部屋の隅に無造作に置かれた冷蔵庫の中身を確認する。
ミルクがない。
…今朝はコーヒー抜きか。
男にとって毎朝のコーヒーは習慣だ。どんなに忙しい朝でも、コーヒー1杯をたしなむ時間は必ず確保していた。むしろ、慌ただしい時にこそ、ゆっくり冷静になる時間が欲しくなるものだ。
男はシャツの胸ポケットから千切れた紙切れを取り出す。そこには『4:00、6ブロック 酒店グローク』と記されていた。
下見、調整、ターゲットの確認を含めて、現場には、最低2時間前には到着しておきたい。男が住む第13地区から現場の第6地区までバスを利用して1時間。途中、第10地区の市場に赴いたとしても十分時間はある。手の中のメモを折り曲げ、胸ポケットに戻す。こうも時間に余裕が生じてしまっては、本来あるべき人間性が鈍ってしまう。
肩にかけていたタオルを洗面台に放り投げ、代わりにイスに掛けていたジャケットを取る。屋外で時間を過ごすのも悪くないだろう。何故か、そう思えた。
そして、男は扉の向こうへ姿を消した。
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