□苦いチョコ
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帰りのホームルームが終り、生徒達は自宅へ、部活へと席を立つ。
豪人も部活へ向かうため席を立った。
「豪人くん」
呼び掛けられ振り向けば竹露が照れたような笑みを浮かべて立っている。
「何か用か?」
一応聞いてはみたが竹露が自分に何の用があるかは容易に想像がつく。今日は2月14日なのだから。
「あのね…これ…チョコ、作ったんだけど…」
竹露の手のひらには水色の包装紙で可愛らしくラッピングされた小さな箱が乗っている。
「甘いモンは好きじゃねぇから」
「うん…それは知ってるから、あんま甘くないように作ってみたんだけど…」
「いいって」
豪人の口から出てくるのは予想通りの冷たい反応。
「食べなくてもいいからさ、とりあえず受け取ってよ。せっかく作ったんだもん…」
「いらねぇって言ってんだろ、めんどくせぇ…」

一瞬、教室の空気が氷ついた気がした。
生徒達が歩みを止め、二人の方へと視線を向ける。

「豪人くんなんか大嫌い!!」

べしっ

「いてっ…」
竹露が全力投球した箱の角が豪人の額に突き刺さり地面へと落ちた。
竹露は泣きながら教室を駆け足で出ていってしまった。

 
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