文
□◆心の鎖
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全身を撫で、口づけ、躯を繋ぐ。
愛しているという囁きは心の底からの言葉だ。
養父の死より数ヶ月前に、弟に口づけた記憶が蘇る。
これは愛だと弟にも自分にも言い聞かせた。
オレ達は特別な絆で結ばれた兄弟なのだと。
今思えば弟を縛り付けておくための儀式だった。
剛三郎の死と共にオレはその縄を手放した。モクバの心を縛ったままに。
兄弟の情を捨てたオレからモクバは離れることも出来なかった。
やがてその縄も消え、オレ達の間には新たな絆が生まれた。
それは間違いなく家族の愛情だった。
その絆もそろそろ不確かなものになる。
モクバはもうすぐ成人する。
モクバは自由と責任を手に入れ、オレはモクバを守る義務を失う。