□酒のせい
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「ああもうカラになってもた。
ワシ1杯しか飲んどらんのにオマエどうゆう飲み方しとるんや。
若いうちからそんな飲み方しとったら、今はエエけど2年もしたら肝臓やられるで」
そう言って小鉄は水を飲んだ。
隣ではジュニアが手足をだらしなく畳に投げ出して寝転んでいる。
「だいたい人間と猫は10倍以上体重ちゃうねんから酒も10分の1くらいで…」
「なあ小鉄…」
だるそうなジュニアの声が説教を遮った。
「もしもこの世から酒が消えたらホルモン焼き屋は商売上がったりやで。
お好み焼きは酒飲まんやつもようけ食いに来るけどホルモンは酒のアテや」
天井を見上げながらゆっくりと話し始める。
「なんやいきなり」
「そやからオマエは飼い主の商売のために酒に感謝する義務があるんや。
つまり酔っ払いに感謝せなアカンのや」
「何が言いたいんや」
小鉄は呆れたように軽くため息をついた。
「つまりな…」
ゆっくりと上半身を起こすジュニア。その頬は酒のせいでうっすら赤く見える。
「オレいま酔うとるやろ」
「まああれだけ飲んだら酔うやろな」
「例えばオレがオマエを一升瓶で殴ってもオマエは許さなアカンねん」
「なんでやねん」
「それがホルモン焼き屋の従業員の務めや」
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