文
□◆感情
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自分にもこんな感情があったのだと自覚した――
他校同士の試合を偵察に行く途中、桜庭のファンに囲まれた。
囲まれたと言っても数は4人、全員女性なので威圧感も無いし態度も温厚なものだ。
彼女達は次々に握手やサインを桜庭に求める。
その間やることの無い進は輪から少し離れてその様子を伺っていた。
彼女達がどれ程桜庭を好きなのかは分からない。
桜庭の姿を目にしただけで気を失ってしまうほどに彼を好いているファンがいるのを知っている。
しかしたまたま有名人を見かけたらファンでなくとも握手を求めたくなる人間も多くいるだろう。
彼女達がそのどちらなのかは分からない。
そして進はモデル桜庭春人のファンではない。
桜庭を見て失神したことなどは当然無く、有名人だから握手をしたいと思ったこともない。
しかし――
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