文
□chocolate
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「進、これあげる」
桜庭から手渡されたのは包装紙に包まれた小さな箱。
「チョコだよ。今日バレンタインだろ?だから…あ、必要な分しか食べないんだっけ?
賞味期限は長いからもしチョコが必要になるような事態があれば食べてよ。
進が食べないならお母さんに食べてもらって」
バレンタインは女が好意を寄せる男にチョコレートを渡す日だと認識している。
男から渡されたこれを自分はどう思えば良いのだろうか?
季節の行事というものは地域によって多少異なるし年々変化もするだろう。
しかし自分と同じ地域に住む同じ歳の彼と、バレンタインに対する認識に大きな差があるとは思えない。
これは桜庭が自分に好意を寄せている…そう解釈してもかまわないのだろうか?
たとえ男同士であろうとも桜庭なら…桜庭の想いになら答えることが出来るかもしれない。
「桜庭…これはありがたく頂戴する」
返事は…じっくり考えて来月のホワイトデーにすれば良いのだろうか?
「あ、大田原さんチョコどうぞ。
たくさんもらっちゃって1人じゃ食べきれないんで…おすそ分けです」
「ばっはっは!去年より多いじゃないか!」
「良かったら2個でも3個でも…若菜も2個いる?」
「いただきます、ありがとうございます」
俺の勘違いだったようだ。
悩む必要など無かった。
終
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