+Clap+
□葵
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『Only Pride.』
最近、一緒に暮らし始めた妹に…
「お兄ちゃん、はいコレ」
突然手渡された銀色の包み紙。
葵「チョコレート…?」
「そ♪なんか煮詰まってそうやったから。脳を活性化させるにはチョコレートが一番(笑)」
葵「さすがお菓子好きやな(笑)ありがとう」
俺はひとつ礼を言うと、再びギターを抱えパソコンに視線を戻した。
「お兄ちゃん…」
葵「んー?」
部屋のドアを開ける君は、振り向かずに俺を呼ぶ。
俺も背中で返事をする。
「それ…手作りやから」
葵「え?」
俺が振り向くと同時に閉まる扉。
机の上のチョコレート。
ふと見上げた目の前のカレンダー。
葵「あぁ、なるほどね」
俺は危うく椅子に根を張りそうだった腰を上げ、リビングへと向かった。
………………………………
「はぁ…」
お兄ちゃんの部屋を出ると、そのまま私はリビングのソファにダイブした。
「お菓子好きとか、なんでやねんっ!!お兄ちゃんのアホ〜!!」
葵「誰がアホやて?」
「わっ!!なんでいるん!?」
頭上から降る低い声に、異様なまでに驚く私。
勢いよく起こした体は思わず正座していた。
そんな私にお兄ちゃんは苦笑いを浮かべ、ソファの空いたスペースにそっと腰掛ける。
葵「なんではよ言わんかったん?」
「え…?」
葵「え?やなくて、チョコレート。作ったん、今日やないやろ?」
「だって…仕事してたし、邪魔したらいかんし…」
そう言って、私は行き場のない視線を下に落とす。
葵「お前もアホやな〜」
「…は?」
葵「そんな気遣わんでえぇよ。それと…」
ふわり、と鼻を掠める香水の香り。
突然過ぎる体温と窮屈感。
葵「バレンタインまで一人っきりにさせやんでよ(苦笑)」
「お兄ちゃん…」
葵「今日は遅れて来たバレンタインって事で!のんびり過ごそ」
「うんっ!!」
友達以上恋人未満?
私達の関係はそんなもんやない。
ただの兄妹。
だけど、私達には恋人以上の繋がりがある。
切っても切れん強い絆がある。
だから私はこの立場を、
“お兄ちゃん”と呼べるこの立場を、
何よりも誇りに思う。
「お兄ちゃん大好きっ!」
-END-
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