SHORT STORY

□言えない気持ち
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〜悟史〜

何を思った訳じゃない

ただ思い付くままにいってみた


「詩音ってさー…どうして毎週来てくれるの?」


生き生きと林檎の皮を包丁で器用に剥いていた詩音の手が止まる


するとワインをグラスに注いでいくみたいに詩音の顔が下からゆっくりと赤くなっていった


暫くの沈黙


「…ねぇ詩音?」


「ぅひゃぁい!!!」


僕が声をかけると詩音が跳び跳ねて林檎を落とした


再びの沈黙


詩音が落とした林檎を拾おうと屈み込みぼそりと声がした


「…来ちゃ…迷惑でしたか…?」


声に遅れて詩音が顔を上げる


悲痛そうな悲しそうな顔


こんな顔…詩音にはしてほしくない


「そんなことないよ…!詩音が毎週来てくれるお陰で僕元気もらってるし…詩音が一緒に居てくれると…安心できるな…」


慌てて弁解すると詩音の表情が明るくなっていき、少し涙目で笑った


「えへへっ…ありがとうございます…」


詩音が泣いた


僕はどうしてやったらいいかわからなくてそっと詩音を撫でてやった


詩音は何時もの通り少し赤くなってこそばゆそうに目を細めて撫でられていた




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