「おら、どけ」
奥から人を押し退けて玄関に顔だけ覗かせる先輩は少々不機嫌な様子。
あれ、来ちゃいけないタイミングだったかな……。
「ごめんな、桜。散らかってるけど……」
「す、すみません、突然!
肉じゃが持って来ただけで、すぐ帰ります!」
「……」
あれ……
本当にいけないタイミングだったかな……
いけないこと言っちゃったかな……
何も言わない先輩と先輩の友達に、不安になる。
「……先輩?す、すみません!やっぱり帰ります!」
脱ぎかけていた靴を履き直し、玄関の扉に手をかけると
「待って待って待って!」
あたしを呼び止めるのは玄関にいた森先輩で。
「ほら、俺らも彼女ちゃんの"先輩"だし」
「やっ、えっと……っ」
肩に手をまわされて……と思ったら先輩が出て来て。
「ってぇ……」
「触ってんじゃねぇよ」
先輩に捻られた腕をさすりながらニヤニヤする森先輩を後ろ目に、
先輩に腕を引かれ、外に出た。