春から一人暮らしを始めた1LDKの部屋、
無事に大学1回生の1学期を終え、掃除をしていた夏休み初日。
―――ピーンポーン
突然の来客を知らせる音に、インターフォンのモニターを覗くと、宅配便の制服の緑の帽子が映っていた。
今出まーす、と言って玄関に走り、カチャッと扉を開いた。
宅配人が、誰なのかも気付かず。
「っ、!」
帽子の下の顔を見て、それが臣くんだと分かった瞬間、
開けたばかりの扉を力の限り閉めた。
それなのに、
その力も虚しく、
あたしが扉を閉めるよりも一瞬早く、彼の左手が扉の隙間に入り、
押さえると言うよりも挟まっているその状況に、思わず扉から手を放した。
その隙をついて、彼は部屋に入り、扉を閉めた。
「由希…」
切ない瞳に見つめられ、懐かしい声で呼ばれたあたしはビクッと震えた。