「それで、美香がねー、あ!」
いつの間にか北川のおノロケ話になっていたが、1人しゃべっていた北川が突然声をあげた。
その視線をたどると…
「あれ三矢さんじゃん?」
「っ!」
ウェイトレスのユニフォームを着て若い男ばかりの席でオーダーを取っている。
バイトか。
午後9時前、晩夏とはいえ外は真っ暗。
「バイトか、アド聞いて来いよ悠太郎」
冷やかす祥治の声は頭に入らなかった。
苦手な男たちを前に笑顔がひきつっている、
何を言われたのか少し体を強張らせている、
腕を掴まれた、三矢さんに近づいた。
「やめてあげてください、困ってます。」
三矢さんの腕を掴む男の手を素早く引き離した。
「あぁ?誰だてめぇ」
やべ、こういうの苦手なんだよ僕!
かっこつけて出てきたけどこれじゃあただの恥さらし…
「おいおいマジでやめとけって」
止めてくれたのは男の前に座っていた奴で…
「すみません!」
男たちに頭を下げた三矢さんに目立たないところに引っ張られた。
助けるつもりが三矢さんに謝らせるなんて…
男らしくない自分に自己嫌悪に陥る。