小説

□かくしあい
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凜々蝶様の写真が飾ってある部屋がある。

そこには実は凜々蝶様の写真だけでなく、別の写真も飾ってある。

秘密の部屋には、もう1つ秘密がある。







〜かくしあい〜







夏目さんが僕の部屋に暇だと言って遊びに来ていた時のこと。

リビングで話していた途中、お手洗いに行った夏目さんの帰りが遅いので探してみれば、凜々蝶様の写真が飾ってある部屋のドアが開いていることに気付いた。

覗いてみると、そこにはやはり夏目さんが入っていた。

「この部屋すっごいね〜、見事にちよたん一色って感じで☆」

「他人の部屋に勝手に入り込むなんて感心できませんね。早く出ていただけませんか?」

「いやん、そーたん怖いー。」

茶化すように笑う夏目さんを引っ張り部屋の外へ出す。

見られてはいけないものがある。

否、視られてはいけないものがある。

部屋の奥の方に飾ってある写真。

凜々蝶様をメインには撮ってあるが、その背景に写っている人物が目的であること。

その人物が、今まさに目の前に居る人物であること。

凜々蝶様が好きという気持ちは嘘ではないが、それよりも夏目さんが好きということ。

本当は、抱きしめたりじゃれたりキスをしたりしたい。

押し倒して、喘がせて乱れさせたい。

でもそんなことが分かれば、優しい彼をきっと困らせてしまう。

苦笑いをして、それとなしに断られてしまうだろう。

そうなればもう、元の幼馴染みという心地よい関係にすら戻れないだろう。

それだけは避けたい。

「ねぇそーたん。」

夏目さんがリビングに向けていた足を止める。

くるりと振り返れば、その表情からは申し訳なさが読み取れた。

「ごめんね、ちょっと悪戯しようと思ってただけなんだけど…。」

色々視えちゃった。

そう言って夏目さんはズボンのポケットに手を入れる。

出てきたのは、見られたくないと思っていた写真。

差し出されるそれを反射的に手を出して受け取るものの、どうしていいかわからない。

知られてしまったのだ、この気持ちを。

「そーたんってば、隠すの上手いよねぇ。ちよたんが好きなんだって思ってた。」

ゆっくりと夏目さんが近付く。

彼の目を直視することができない。

「でもボクもさぁ、隠すの上手かったでしょ?」

…隠す?一体何を?

何を言われているのかわからなかった。

顔を上げると一瞬目が合って、夏目さんが僕の顔を両手でおさえる。

と、次の瞬間、唇に柔らかいものが触れた。

何が起こったかわからない。

そのままぽかんとしていると、クスクスと笑っている夏目さんが目に入った。

「ボクもそーたんに抱きついたりじゃれたり、ちゅーしたりしたいって思ってたよ。」

抱きついたりじゃれたりはいっつもしてるけどね☆と夏目さんは笑った。

「好きだよ、そーたん。」

言った夏目さんの顔は心なしか赤くて。

それが可愛くて愛しくてどうしようもなくて。

もう一度、今度は僕から、返事代わりのキスを送った。







END

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