小説

□無糖乳脂肪
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「ざ、残夏…わり…。」

頭から滴る白い液体。

足元には音を立てて転がるボウル。

目の前にはなんか青ざめてる渡狸。

どうしてこうなった。







〜無糖乳脂肪〜







「た、タオル取ってくる!」

「え、ちょっと渡狸!」

ボクの制止を聞かずに渡狸は走り出してしまった。

ボク達は先ほどまで、渡狸のお願いでカルタたんにあげるケーキを作ってた。

しかもラウンジのキッチン借りて。

だからタオルは自室に取りに行かなくてもここにあるはず。

そんなことは見えなくなってしまった渡狸は考えてもいなかっただろう。

「もー…ちゃんと持っててよね…。」

床に転がったボウルを拾う。

中に入っていたはずの生クリームは、見事にボクの頭の上だ。

クリームの固まり具合をボクに見せようとして、渡狸が手を滑らせてべちゃりと。

ボウルに残ったクリームを少し指で掬って舐める。

「…甘くない…。」

まさか砂糖入れてなくてかき混ぜてたの?

それじゃケーキは美味しくならないかもしれない。

でもボクはこの甘くない生クリームの味は好きだ。

「残夏何してんの。」

「あ、レンレンー☆」

生クリームを堪能してたら、いつの間にかラウンジに来てたレンレンに声をかけられた。

まじまじとボクを見てくる。

「やーん、そんなに見られたら穴が開いちゃう〜。」

「いやー、残夏うまそうだなって。」

「…はい?」

なんか聞き間違いであってほしい単語が聞こえたような…。

「いただきまーす。」

「え!?まっ…うわぁ!?」

気付いたら目の前までレンレンが移動してて。

気付いたら目の前がレンレンと天井で。

本気?ここ一応ラウンジなんだけど。

「んっ…!」

頬に付いてた生クリームを舐め取られる。

甘くないのな、なんて言ったけどぺろりと舌舐めずりするレンレンからは、もう逃げられないと思った。

「っお、おおお…お前ら何してんだあああ!!」

「あ、渡狸。」

ナイスなのかナイスじゃないタイミングなのかはわからないけど、渡狸が戻ってきた。

いやね、うん、忘れてたわけじゃないんだけど。

はぁはぁと息を切らす渡狸の手にはしっかりとタオルが握られていた。

「ちぇー、残念。」

よっと言いながらレンレンがボクから退いた。

ボクも一緒に立ち上がる。

「お前らなぁ、場所くらい考えろよ!」

「だって残夏がうまそうだったし。」

「うまそうにしたのは渡狸だからねー☆」

「俺のせいかよ!」

ギャーギャー言う渡狸からタオルを受け取って、頭を拭く。

お預けを食らって地味にしょげてるレンレンに、目配せで後でねと伝える

上手く伝わったのか、レンレンの表情は一瞬明るくなって、そのままラウンジを出ていった。

「さぁ渡狸、もう一回作り直すよ。」

「お、おう!」

さぁ、さっさと済ませてしまおうか。







END

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