小説

□垣間見えた、
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「あ、レンレーンっ☆」

「おー、残夏じゃん。」

下校するために学校の門をくぐる。

かわいいうさぎ耳がひょっこりと現れた。







〜垣間見えた、〜







「何してんの?渡狸待ち?」

残夏は渡狸のSSだ。

だったらきっと渡狸を迎えにきたに違いない。

「そうだったんだけどね、カルタたんに誘われたみたいで二人で出掛けちゃったんだー。ボク悲しいっ。」

なるほど、渡狸がカルタの誘いを断るわけない。

目の前の残夏はわざとらしく泣く真似をしてる。

それも可愛いと思ってしまう俺は重症。

「…ん?じゃーなんで残夏居んの?帰らねーの?」

「せっかくだから、レンレンと帰ろうと思って待ってたんだ〜。」

そんなこと言う残夏を抱き締めたくなったのを必死に抑える。

公共の面前で色々するのはと自重。

「…あ、そーいや今日バイトだったわ。わり、一緒に帰れねーわ。」

野ばらが迎えに来てないのが何故だろうと考えると、今日がバイトというとこに行き着いた。

せっかく残夏が誘ってくれているというのに、いささか勿体ない。

しかしバイトをほったらかすわけにもいかないし、俺は申し訳なさげに残夏に胸の内を伝えた。

「あ、そうなんだ?じゃあバイトのとこまで一緒に行くっ。」

「え、いーの?」

「うん。」

「おにーさん嬉しいわ。」

「ふふー、レンレンが嬉しいとボクも嬉しいな☆」

そんな会話をしながら歩き出す。

残夏と外を歩くのは滅多にないから新鮮で、なんだか気分はワクワクしてた。

会話もそれなりに弾んだ。

「あれ、ここのお店潰れちゃったんだ?」

ふと、残夏が呟く。

見てみると、都会ながらの建物が密集している所の一角が空き地になっていた。

「あー、それちょっと前から潰してたんだよな。」

「そうなんだ。こっち側にあんまり来ないから気付かなかったよ〜。」

残夏は空き地をじっと見つめた。

「そーいや、ここ何の店だったっけ?覚えてねーわ。」

「もう、レンレンったら忘れんぼさん☆パン屋さんだったよ。」

クリームパンが美味しい店だったと残夏は付け加えた。

「よく覚えてんなー…俺全然思い出せねぇ。」

「ボクはなるべく色んなものを覚えるようにしてるんだ〜。」

「へー、それ大変じゃね?」

「大変かも?…でも…」

忘れられるの、辛いじゃない…?

残夏がぽつりと言った。

本人も無意識だったのか、はっと何かに気付いたような素振りを見せ、いつもの笑顔に戻る。

「あははっ、ちょ〜っとおセンチになっちゃったねー。」

「っ…残夏…!」

いつもの笑顔のはずがなんだか寂しそうで。

苦しそうで。

泣き出しそうで。

まるで残夏が消えてしまいそうで。

たまらず俺は残夏を抱き締めた。

「んっ…レンレン、ここ街中…。」

残夏は少し抵抗したが、更に強く抱き締めると大人しくなった。

「ごめん…。」

「謝るんだったら離してー。」

「いや、そっちじゃなくて…。」

「じゃなくて?」

「忘れる方。」

ピクッと残夏が反応した。

そしてそのままこてっと頭を俺の肩に預けてくる。

「前の俺ら…残夏のこと忘れちまってたんだろうなって思って…。」

「…うん。あ、でももう慣れちゃったけどね〜。」

あは、と笑う残夏だったけど、頭は肩に乗せたまま。

その頭を優しく撫でる。

慣れたなんて絶対嘘だ。

そんな残夏に、次は忘れないって言えば良かったかもしれない。

でも忘れない自信なんて無かった。

言って、来世で更に残夏を傷付けたくなかった。

「…レンレン…。」

「何?」

「バイト遅れちゃうんじゃない?」

「…は?」

さっきまでの雰囲気からおもいっきり反れた台詞を言う残夏に思わず変な声を出してしまった。

携帯で時間を確認してみると、まぁそれなりに危ない時間。

「遅刻はダメだよ〜☆」

「おい残夏…。」

「ほら、早く行きなよ。」

くるりと体を進行方向に向けられて、とんっと背中を押された。

振り返るといつもの笑顔の残夏が立ってて。

「帰り、待ってるから。」

そう言って手をヒラヒラっと振られる。

「…おう。」

その後俺はバイト先に走った。

帰ったら残夏を目一杯甘やかしてやろう。

そう思いながら。







END

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