小説
□1本の花言葉
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「あのっ…好きです…!」
いつも通りに高校生組を学校に送り届けた時。
女の子からそう言われて、薔薇の花を1本渡された。
〜1本の花言葉〜
「良かったですね、夏目さん。」
「かわいい子だったよね〜。」
「しかし夏目さんにお付き合いされている方がいらっしゃったとは、知りませんでした。」
「あぁ、あれ嘘なんだ〜。」
「さようでございますか。」
現在はそーたんが運転してくれている帰りの車の中。
今朝の出来事を思い出す。
ボクは女の子に告白された。
一目惚れだったらしい。
でもボクはそれを断った。
簡単に諦めてくれるかわかんなかったから、彼女居るって言って。
渡された薔薇はできるだけ嬉しそうに受け取っておいた。
(一目惚れ…かぁ…)
もらった薔薇をクルクルと回しながら思う。
薔薇は1本だけだと「一目惚れ」って花言葉があるって昔聞いたことがあった気がする。
あの女の子はきっとそれをわかってて、ボクに薔薇を渡したんだろう。
一目惚れって、本当に衝撃的だよね。
ん?どーしてそんなことがわかるかって?
そりゃあボクも経験者だからさっ☆
ボクの一目惚れはそーたん。
柔らかな銀の髪と、色の違う瞳。
初めて見た時のあの感覚は忘れられない。
そーたんと初めて会ったのなんて、何回前の話かなんて覚えないけど。
「ねーそーたん。そーたんってちよたんからもらったの全部保存してるんだよね?」
「はい。丁寧に処理を施して、傷まないようにしてあります。」
キラキラとした笑顔でそーたんが言う。
綺麗だと思う。
そして胸が高鳴るのを感じて、まだそーたんを好きだとも。
でもそーたんはちよたんが好きだ。
ボクは邪魔しちゃダメなんだ。
「そのやり方さぁ、ボクにも教えてよ〜。」
「夏目さんに、ですか?」
少しキョトンとしたそーたんの声が返ってくる。
「うん。これ残しときたいなって。」
「告白を断ったのにですか?」
「こんなに気持ちの籠った物、滅多にもらわないからね〜。記念に残すんだ☆」
にっと笑うとそーたんがふっと笑った。
「来世まで残るかなぁ?」
「来世ですか。」
「うん。来世の僕に渡したいんだ。」
ボク皆より寿命短いし、きっと残る可能性も高いよね。
「きっと残りますよ。」
「ありがと、そーたん♪」
そんな優しいとこも好き。
来世までもしこの薔薇が残ってたら、今度こそそーたんにこの気持ちを伝えたいな。
「さぁ着きましたよ。僕の部屋でゆっくり進めていきましょう。」
「うんっ。」
そーたん大好きっ。
END