小説
□悪戯要注意
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「夏目くん!」
「あはは、ひっかかった〜!」
日曜日の朝。
なにやらラウンジが騒がしい。
〜悪戯要注意〜
「凜々様、どうなさったのですか?」
「夏目くんが僕の紅茶を温かいジュースに替えていたんだ。」
「ちょーっとした悪戯だよ☆」
けらけらと仕掛人である残夏は笑う。
凜々蝶は口の中のなんとも言い難い味に顔をしかめた。
その顔良いわ!メニアック!という野ばらの声が聞こえたのはスルー。
「夏目さん、凜々様にそのようなことをされては困ります。」
「だってー、渡狸がカルタたんと出掛けちゃって、面白い反応くれるのちよたんだけなんだもーん。」
強いて悪びれた様子も無く、残夏はいつものように笑っている。
それを見て、双熾はすっと細めた。
「そうですか…では夏目さんにも悪戯をしなくてはいけませんね。」
「へ?」
どろん、と双熾が残夏に化ける。
身長、体つき、包帯までも完璧に再現されている。
「悪戯をするからには、徹底的にやらせていただきます。」
声までもが完璧だ。
ただ、自分ならそんな爽やかそうな顔はしないだろうなと残夏は思った。
そのまま双熾は連勝の方に向かっていく。
「お兄様。」
「おーミケ。すげーなー、残夏じゃん。」
連勝はいつもと変わらないゆるい態度で双熾を見つめる。
正直のところ、まったく判別がつかない。
「お兄様、僕の腰の辺りを触っていただけますか?」
「んー?こうかー?」
双熾に言われた通り、連勝が双熾の腰を触る。
…と、
「ひぁ…っ!」
「!?」
双熾が突然色っぽい声をあげた。
「レンレンっ…そんなとこ触っちゃダメ…。」
顔を赤らめて、うっすらと涙を浮かべて。
おそらく演技なのだろうが、その破壊力はバツグンだった。
その場に居た全員が固まった。
「レンレンのせいで…ボク我慢できそうにないよ…。」
そのまま双熾は連勝の耳元に唇を寄せる。
「続き…しよ…?」
熱っぽさを帯びた、甘ったるい声で囁いた。
連勝がそんなのに耐えられるはずもなく、ごくりと生唾を飲み込む。
「さぁ、本物の夏目さんでどうぞ。」
どろん、と双熾が元に戻る。
連勝はふらふらと残夏に近づいて行った。
「っ…レンレン?まだお昼だから…ね…?」
「わり、ムリだわ。」
ひょいと残夏を担ぎ上げる。
そのまま急ぎ足にドアに向かう。
「ちょ、レンレン本気!?や、ひぁっ…!?」
「うん、やっぱ本物の方が感度良いわ。」
腰を触られ、残夏は声を上げる。
そして抵抗も虚しく、二人の姿はラウンジから消えた。
「…何あれ…男同士とかほんと信じられない。あんなやつのSSとかやめたい。」
「御狐神くん、君は鬼だな…。」
「はい、僕は凜々蝶様のためなら鬼にもなります。」
「いや、そういうことではなく…。」
凜々蝶が吐いた溜め息はラウンジに消えた。
END